both ticking.







郵便が届いた。
…何故か差出人不明で。


箱の中身を開けてみれば、中にはシンプルで大人っぽいデザインの腕時計が。…きっとこれはケンちゃんの仕業だな。


彼はサプライズが得意だから、きっと今回もそうなのだろう。腕時計を手に取り付けてみると、とてもお洒落でうっとりしてしまう。


念の為ケンちゃんに連絡を入れると、「今から名前んとこ行くばい!」との返信が。



1時間後、ピンポーンとインターフォンが鳴った。扉を開ければ、ニコニコと楽しそうにしているケンちゃんの姿が。




「お邪魔しまーす」
「どうぞー」



ケンちゃんをリビングのソファへと誘なう。彼の隣に座り、先程からずっと付けている腕時計を見せた。



「時計、ありがとうね」
「あっ、おいが送ったってバレたと?」
「そりゃあ分かるよ。にしても、すっごく素敵だね、この時計」




もう一度腕時計を眺める。
照明の光がシックな文字盤に反射して、キラキラと輝く。
本当に、純粋に嬉しくて、幸せだ。



「…でも、どうしてこんな何でもない日にプレゼントしてくれたの?」
「んー…まぁ、日頃の感謝っていうかね、びっくりさせたかったっていうか」
「へぇー」
「うん。それにさ、いつも名前には寂しか思いさせとるから…お詫びっていうか…」




笑顔だけど、どこか申し訳無さげにしているケンちゃんの表情に、胸がぎゅっと締め付けられた。


そんなことないのに。気にしなくていいのに。そんな想いを込めて彼の手を握り、肩にもたれかかる。




「じゃあ、日頃の罪滅ぼしってこと?」
「ちっ、違うばい!そんなんじゃなか!」
「あはは、冗談だよ」



冗談に決まってるじゃん。ケンちゃんの気持ちは、痛い程分かっている。わたしを心から想ってくれている、その温かな気持ち。全部ぜんぶ、伝わっているからね。


なんだぁ、と安心した声を出すケンちゃんが、今度は腕まくりをして左の手首を見せてきた。



そこには、わたしと同じデザインの腕時計が。





「へへ、おそろいったい」
「えっ」
「男でも付けれるデザインやったけんね、おいも買ったんよ。名前とお揃いのもの持ちたくて」




良かやろー?
そう言ってふにゃりと微笑むケンちゃんの笑顔に、改めて幸せが湧き上がる。


おそろいの腕時計。
伝わる気持ち。
再確認する幸せ。
大好きな笑顔。


全てが愛おしくて、どうにかなってしまいそうだ。





「ケンちゃんありがと。時計大切にするね」
「ん。おいも。時計も…名前の事も大切にすっけんね」
「…ケンちゃん」
「同じ時間、刻んで行こね」






繋がれた手には、おそろいの腕時計。



彼の言う通り、ずっとずっと同じ時を刻んで、もっともっと沢山の幸せを感じることが出来ますように。
そして、彼との時間を1秒1秒、大切に出来ますように。


















both ticking.

(何だか外したくないなぁ)

(お風呂ん時壊れるとよ!)

(…正論ですね)




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