甘い微睡。
スマホのアラームで目が覚めた。
カーテンからうっすらと朝の光が漏れている。
まだ半分閉じかけている目で隣を見ると、恋人であるケンちゃんがすやすやと眠っていた。
昨日は、何時に帰ってきたのかな。
彼はいつもわたしが寝静まった頃に帰ってくる。
気を遣ってくれているのであろう、いつも物音すら立てずに帰ってくるもんだから、「おかえり」すら伝えられない。
まぁ、彼の職業柄寝る時間が異なるのは仕方ないのだから、わたしがアレコレ言える立場ではないのだけれど。
今日は仕事が休みだし、ケンちゃんに朝ごはんでも作ってあげよう。
そう思い立ちベッドから出ようとすると、左手をぎゅっと掴まれた。
「ケンちゃん?」
「んー…名前…」
寝惚けてるのかな、と思いきや、彼はゆっくりと瞳を開いてわたしを見上げた。
「…いかんといてよ」
「いや、朝ごはん作ろうかと思って」
「んん、ありがと…。でもここ居って…」
そう言うと、また夢の中へと戻っていった様子のケンちゃん。
わたしの左手を掴んでいた手も、だんだんと弱まっていく。
普段ならそんなことを言わないケンちゃんの言葉に、どきどきと胸が高鳴る。きゅんと甘く溶けそうな気持ちが心臓の辺りで渦巻く。
「…仕方ないなあ」
幸せそうな顔で眠るケンちゃんの髪を撫でて、もう一度ベッドに入る。彼の体温が、徐々に眠気を誘う。
朝ごはんは、ケンちゃんと一緒に作ろっと。
しっかりと彼の手を握りしめ、もう一度温かな眠りについた。
甘い微睡。
(幸せな夢を。)