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こんなに早々と事件が起こるだなんて、さすがは明智探偵事務所。
明智探偵事務所 事件簿 Vol.6
どうも明智です。
名前が顔面蒼白でリビングに戻ってきたかと思えば、どうやら僕らは監禁されているようです。
部屋中のあらゆる窓を開けようとしたが、全く開こうとしない。しかも何故か携帯も圏外。さすがの僕も少し冷や汗が。
「先生、どうしましょう。ナオミさんも見当たらないし、僕たちずっとこのままなんでしょうか…」
しっかり者の長谷川少年でさえも不安で顔を強張らせている。
いかんいかん、ここは僕がしっかりしなければ。少年たちも名前も、僕が守る責任がある。
「とにかく皆、僕の周りから離れないでください。大丈夫ですから。落ち着いてください」
「先生…」
不安がる助手たちを自分の側へ引き寄せる。そして、名前の手をぎゅっと握った。
一体どうしてこんなことになったのでしょうか。
「やっと仕掛けに気付いたのね、明智竜太朗!」
絶望しかけたその時、背後から声がした。
バッと振り返ると、そこにはナオミさんの姿が。
「ナオミさん」
「まんまと引っ掛かったわね」
「一体どういうことですか」
「ふふふ。そんな怖い顔なさらないで」
にっこりと微笑むナオミさんが僕たちの方へ歩いてくる。あまりの恐ろしさに、ケンケンがヒッ!と短く悲鳴をあげた(コラ)。
「殺害予告なんて真っ赤な嘘よ。旦那なんかもいないわ。全部あなたたちを陥れる罠だったのよ!」
「な、なんてこった」
まんまと騙されていたのですね。
ああ、見抜けなかった自分が情けない。
「ナオミさん、とにかく僕たちを解放してくれませんか」
「はっ、ただで解放させてあげるわけないでしょ?」
「なにか条件があるのですか」
「ええ」
ナオミさんはそう言って怪しく微笑むと、僕の手から名前を引き剥がし、自身の腕で羽交い締めにした。
「ぎゃっ!」
「名前っ」
「普通に解放するわけないでしょう。この女の子が殺されるか、あなたたちが解放されるか。どちらか選びなさい」
「そ、そんなの汚かよ!」
いままで恐怖で黙っていたケンケン少年が声を上げた。
「先生、あたしなら殺されてもいいですから!みんなで逃げてください」
「それはだめに決まってるでしょう」
「いいんです、ナカヤマくんも漫画読みたがってるし。はやく逃げてください」
いやいや、何を言ってるんだ名前は。
僕には名前も少年たちも無事に逃がさなきゃいけない義務があります。しかし、ナオミさんの条件があまりに酷く、決断が出来ない。
「…明智竜太朗」
「はい」
「この女の子も助かって、あなたたちも解放させてあげられる条件が一つだけあるわ」
「なんですか、それは」
すると、何故か急にもじもじし出すナオミさん。すーっと大きく息を吸い込むと、大きな目を更に大きく見開いて、こう告げた。
「あたしを…あたしを明智探偵団に加入させなさい!」
へ?
「あ、明智探偵団に入りたいのですか?」
「そうよ。そしたらこの子の命もあなたたちの命も助かるわ」
「えー…」
ナオミさんは明智探偵団に入りたかったがために今までのくだりを用意したのでしょうか。…とんでもない人だ。
「どうするの、明智!」
「…じゃあ入ってもいいですけど」
「ほんと!?」
名前もぽかんと口を開けて唖然としている。少年たちも呆れて何も言えない模様。
僕も何だか状況がよく分からなくなってきた。
ああ、なんとここに来て、悪者が探偵団に加入するという前代未聞の出来事が起こってしまいました。
(ほんとはお断りしたいのですが)
(名前の命には変えられません)
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