真っ白な羽

「今日も寒かったな〜。」

学校の帰り道、白い息を見つめながら彼は言った。

『まぁ、冬なんだし当たり前でしょ?』

「雪、まだ降ってないけどな。」

『天気予報じゃ、今日の午後から降るっていってたんだけどなー。』

時刻は既に6時30分を過ぎていた。
この時期は日が落ちるのが早く、辺りは暗い闇に包まれていた。

『ごめんね、賢吾。委員会の仕事、手伝って貰って。』

「ん?良いってあれくらい。それにあんな大変な仕事、彼氏として手伝わないわけにはいかないだろ?」

『あははっ!ありがと。』

満面の笑みを浮かべる彼に同じく笑顔で返したあと、ふと空を見上げた。

曇っていて何も見えない。
ただ、暗いだけ。
私もまた、うっすらと自分の吐いた息が消えて行くのを見つめた。

「絢那?どうかしたのか?」

いつの間にか、立ち止まっていたらしく、少し前を歩いていた彼が、駆け足で戻ってくる。
その足音を聴きながら私はまだ空を見上げていた。


「おい、絢那?」

『雪。』

空から落ちて来るそれを指差してそう呟いた。

「お。ホントだ!」

『綺麗な初雪だね〜。』

「だよな。…そういえば、絢那は昔から雪が好きだったよな。」

『まぁね。だってさ……。』

私は、空から舞い落ちる雪をそっと手にとり溶ける様を見た。

『大きい雪は綺麗な羽根みたいだし小さい雪も可愛いじゃない?雪の結晶とかすごいよね!』

「絢那らしいな。」

『ありがと、賢吾。』

また私は、彼に笑顔を向けた。
そして彼も私に笑顔で返した。

「絢那、手。」

『手?』

突然、「手」と言われ訳が解らなくとりあえず手を彼に向けて出した。
すると、上から彼の手が重ねられた。

『え?賢吾?』

「寒いだろ。こんなに手、冷たくして。」

彼の大きな手が私の小さな手を包むように握る。
その手は、私なんかと違い、温かかった。

『賢吾の手、あったかいね。』

「絢那は冷た過ぎ。」



互いに手をギュッと握り締め、絶え間なく降り続ける、白い羽根のような雪の中を歩き始めた。


end.

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