生誕祭08

『ティエリアぁぁー!』

「なっ!?絢那!?」


私はなんの声もかけずにドアを開くと、一目散にティエリアへと駆け寄った。

「はぁ…おい、絢那。
いつも声をかけて、僕が許可をしてから入って来いと言ってるだろう。」

『じゃ、明日からやるよ。』

「……………。」


ねぇ、と声をかけると私は彼の隣に座り、そして、精一杯の笑顔で言った。

『おめでとう!』


あまり素直じゃない彼はきっと照れると思いきや、返ってきたのはまったく別のものだった。


「は?なにを一人で祝っている?」

『いやいやいや。真顔でそんなこと言う?素直に感謝すればいいのに。』

「……風邪か?」

『ちょっと待て。マジでわかんないの?風邪引いてるのはティエリアじゃない?』

私は、自分の額と彼の額に手を当る。
熱はないようだ。


『今日、ティエリアの誕生日だよ!』

「…あぁ。そうなのか。」

『あぁ。じゃない!てか、そうなのかって何!?もっとこう…驚かないの!?』

「別に、あまり興味ない。で、なんの用だ?」

相変わらず一定の落ち着いた声で彼は話すように聞こえたが、なにか違った。

『誕生日プレゼントでもあげようかと思ったんだけどさ…思いつかなくてさー。』

「それを聞きに来たと。」

今の声でわかった。彼は喜んでいる。
私もまた嬉しくなってくる。

『うん!』

「別に何も要らない。…何をそんなに喜んでいるんだ?」

『いや、ティエリアの誕生日を祝ってるんだなーって思って。』

「訳が解らない。」


その瞬間、彼に笑みが浮かんだ。
元々綺麗だが、微笑みがより彼を美しくした。

『やっと笑った。』

「そうか?そうだ…誕生日プレゼントだが…。」

『え、でも要らないって…。』

「今日は僕の誕生日なんだからいいだろう。」

そっと彼の手が頭に乗せられる。
そしてまた、綺麗な笑みを私に向けた。

『っ…。何?私があげれる範囲ならなんでも言って!』

なんだろう、すごく照れる。


「今日だけ、僕のためだけに笑ってくれないか?」

『え!?』

あまりにもいろんな意外で思わず声をあげてしまった。
下手をすれば吹き出していたかもしれない。
彼は当然、あまりいい表情ではない。

『あ、いや、その、そんな事でいいの?』

「それだけでいい。」

彼の笑顔がまた。

『あははっ!』

「な、いきなり!?」


私が笑っている理由を彼は取り違えているだろう。
あとで言わなければいけないと思ったがやめた。

私は彼のために笑っているのだから。


私が今こんなふうに笑っていられるのは貴方のおかげなんだ。


ありがとう。


生きていてくれて

ありがとう。


生まれてきてくれて

ありがとう。




end.
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