絶頂と絶望 (八悟)


※八悟で、もし初めて会ったのが八戒だったら?と言うものです。





“俺に生きている意味はあるのか?”

此処にいるとそんな事をフッと思う時があるんだ。
寒いとか、怖いとかそんなんは無いけどただ淋しいんだ…

だから俺は心の中で、顔も知らない人を呼び続ける。

“助けて、ここから出してと…”



【絶頂と絶望】



「さて、白竜そろそろ次の街へ行きましょうか?」
「キュウ」

八戒の声を聞き白竜がバサッと羽を広げて八戒の肩から下りて一鳴きすれば白竜はジープに変わり、八戒は運転席に乗り込んだ。

ある日から不思議な声が聞こえる様になった。
その声は少年の様な声変わりしていない悲しそうな、辛そうな声。
けれど何故か惹きつけられる様なその声に八戒は此処まで白竜と旅を続けて来た。

「おや、進めそうにありませんね。」

ガタガタな道が続き大きな石が増えた頃、八戒はジープが下りて行けないと分かれば残念そうな顔をしたが、白竜が元の姿に戻り八戒の頬に擦り寄るとくすぐったそうに笑い行きましょうかと肩に乗った白竜の頭を撫でながら言い、八戒は歩き始めた。
砂漠の様に水は無く、廃墟の様に荒れ果てた地を進んで行くと八戒は人工的に作られたのであろう階段を見つけて崩れないか一歩一歩確認しながら登って行く。

「…ど……して……」

人の声が遠くから何時もよりも弱々しい声が聞こえて八戒は何かあったのかと慌ててその場から声が聞こえる方へと走り始めた。

「…誰か…助けてっ」
「っ…君は」


足を進めて行けばどんどんと鮮明に聞こえてくる声に八戒の足は自然と進み、岩の檻に行き着けば八戒は足を止めて檻に閉じ込められた人物に目を奪われた。
動かない小鳥を両手に大切そうに大事そうに持ち、涙を流すその人物は身長ぐらいあるであろう長い茶髪を持ち、透き通る様な金色の瞳は今は涙で潤んでいた。

「誰…?」
「僕は八戒、でこの子は白竜です。君は?」
「俺は……悟空」

弱々しい声を出して顔を八戒へと向けた少年は初めて会う人に怯えた様に見る。
そんな少年を安心させる様に名前を名乗れば一瞬考える様にしてから自分の名を名乗った。
悟空と言う少年は両手足に繋がった鎖をジャラジャラと鳴らしながら鎖がピーンと張るまで近いて八戒に両手に持っている小鳥を差し出した。

「なぁ、あんただったらこいつまた飛べる様に出来るか?また鳴くように…なるか?」
「それは…」

縋る様な瞳と言葉に答えたかったが、ピクリとも動かない冷え切った小鳥に八戒は言葉を詰まらせ、どう言ったら悟空を傷つけないで死んでいると伝えれるのかと考えるより先に悟空はやっぱり駄目なのかと肩を落とし、俯いてしまう。

「やっぱり無理だよな…ごめん。我が儘言って。」
「いいえ。僕こそ何も出来なくてすいませんね。その小鳥埋めてあげませんか?安らかに眠れる様に。」

震える悟空の声に八戒は泣いているんだと直ぐに分かり八戒は掬い上げるかの様に悟空の手を下から優しく触れて、自分の無力さに苦笑いを漏らして八戒は謝ると、悟空はフルフルと首を横に振るのが精一杯だった。
今にも涙が漏れ出してしまいそうで、知ってたと伝えたいのに伝えられなくて、八戒はそんな悟空に優しく土に返してあげる様に言えばコクリと頷いた。

「「!」」

その瞬間、岩で作られた頑丈だった柵はバキッと音を立てて割れて繋がっていた鎖は弾け飛び、重たい手錠がゴトリと音を立てて落ちた。
二人の間には隔たりが今は無く、呆然としていれば白竜がキュウと可愛らしい声で鳴き二人はハッとした。

「…何で外れたんだ?」
「分かりません。ですが、これで埋めてあげられますね。」

自分の手首をまじまじと見ながら言う悟空に八戒は手を差し伸べてにっこりと微笑んだ。
それから二人は小さな穴を掘って小鳥そこにそっと置くと砂をかけて埋めて見つけた石を置くと墓を作り、手を合わせた。

「悟空、私と旅をしませんか?」
「えっ、いいのか?」

合わせていた手を放して立ち上がった八戒は悟空を見て、無意識に旅に誘う様に手を差し伸べれば悟空は戸惑った様な顔をし、不安なのかまだ手を取らず聞いて来る悟空にえぇ、行きましょう。と少し伸ばされた手を少し強引に引っ張り立たせれば、ね?とでも言いたそうに八戒は首を少し傾げた。
どこか懐かしい雰囲気に悟空は何故か涙が溢れだしてきたがコクコクと頷いて行く!と嬉しそうに告げた。





      -next-

まだ少し続きます!
次は裏になりますので注意して下さいm(_ _)m


2011.2.1 完成

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