思い出の先にU



木の葉に来てからと言うもの熟睡する事が出来ていなかったナルトは久し振りにあの森へと足を踏み入れていた

奈良家の私有地である森へと


「お邪魔します」


現れた鹿達は初めは警戒した様な様子を見せていたがナルトの声を聞いた瞬間警戒を解いていて後をゆっくりと付いて来る
それに気を止める事なくナルトは蒼火の姿で一度シカマルが案内してくれた思い出の場所に足を向けていた


「ここに来るのはどんだけぶりかな」

『10年は過ぎてるだろうな』


独り言の様に呟いた言葉に返答があったことに内心驚きながらお腹へと手を置き九尾、九喇嘛の声にクスリと笑い声を漏らした


「木の葉を放れて10年経つんだから10年以上は当たり前だって」

『フン、思い出に何時までもすがりよって』

「時々は思い出に縋りたい時もあるんだよ」


気に入らない様に言う九喇嘛の言葉は責めるものではなくどこか気を使っているようで
そんな似合わない事をする九喇嘛を感じながら池のある場所までやって来た


「本当に懐かしい」


手短な木の根元に腰を下ろしたナルトは目をつむりこのまま寝てしまえればと思ったもののこの間手に入った巻物も気になり巻物を広げたが
そんな状態で巻物を読んだ所で内容が頭に入ってくる事なく
そのままナルトの瞳は閉じていき自然と眠りへと引き込まれた


「ナ…ト…ナルト」


揺すられ目を開ければシカマルがいて
あぁ、夢かと思いながらもあの日々が戻って来たのかと思うと夢でも嬉しいと感じた


「やっと起きたか」

「シカマルっ!」


呆れた様に言うシカマルにガバッと抱き付いた
驚いたシカマルはそれでもどうした?と背中を優しく撫でてくれる
それが泣きそうなほど嬉しくて抱き締める腕に力を込めた


「シカマル、ずっとずっと好きだってば」

「あぁ、俺もだ」


幸せな時

幸せな思い出

夢でなければと願ってしまうほどに…


「…んっ…」


夢から覚めた瞬間、夜霧とシカマルの声が聞こえ内心驚きながら蒼火として接しなければいけないことに傷つきながらシカマルへと声をかけた


「黒燈、いえ奈良シカマルでしたね」


驚いた様に言葉を詰まらせるシカマルを見ながらシカマルの事ならずっと知ってると心の中で呟いた


「いや、それより鹿達によく攻撃されなかったな」

「…慣れじゃないですか。それか、懐かしんでるのかもしれませんね」


懐かしんでくれているなら、関係を鹿達にも認めてくれていたと思えば自然と笑みが漏れたがそこに悲しさが紛れ上手く笑うことが出来きなかった
その瞬間、シカマルが手を取って来たことになんて反応を返したら良いか分からず名前を呼べば


「お前はすぐ消えそうだな」


そう呟く様に言われた言葉にフッと笑い里を渡る者なのだからいなくなるのは当たり前なのにと思いながらもいなくなりたくない。一緒にいたいと思ってしまうのは惚れた弱みと言う奴なのだろうか


「いつかいなくなるだろ?」


そう、いつか…サスケが動く前には放れなければいけない、それを思うと瞳が揺らぎ手を振り払う事ができなかった

サスケが諦めるのを10年待っても居場所を潰してくる

力をつけてもサスケは先を読んだように仕掛け、居場所を潰す


「シカマルはもう関わらない方が良いですよ」

「何言って…」

「きっともう直ぐサスケが動き始めます。だから」

貴方はただそれを見守る中立な立場にいればいい。そうすれば巻き込まれることもないのだから


「俺は逃げねぇよ」

「っ!死にますよ…死んでしまうんですよ!」


逃げないと言ったシカマルの言葉にナルトは掴みかかって何で!逃げて!!と叫びたいのを堪え拳を握り締め絞り出すような声で、泣きそうな声で叫んだ


「俺はあの時とは違う、これでも総隊長だ。簡単に死んでやる気も負けるつもりもない」

「そんなの、何の根拠も無いじゃないですか」


何の根拠もなく言い切るシカマルの瞳は決意を決めている様に綺麗で
余計巻き込んではいけないと拳をきつく握り締め睨むようにシカマルの目を見た


「…お前は似てるな」


フッと緩められた瞳は優しく、まるで暖かい何かに包まれる様でナルトは次に誰の名前が出るのか何となく分かった

うずまきナルト

そうシカマルの口から漏れたのが嬉しいようで気付かれていけないと我慢するのも辛く感じた

「そうやってすぐ気づかれたく無いことを隠して何もないように振る舞う所も、一人で何もかも抱え込む所も、悲しげに笑う所もそっくり…なんだよ」


すぐ違うと言えば良かったんだろうでも何故かすぐに言葉が出なかった


「…わたしは、私はただの放浪者ですよ。居場所も、生きる目的も何も無いただの放浪者です」

「けどな、今はここがお前の居場所なんだよ」


居場所はナルトにとって最も作ってはいけない場所
でも、シカマルの言葉に揺らいでしまう程に衝撃を受けた


「ここ…が?」

「あぁ、お前の居場所はここだ」


始まりであり、別れをしたこの里が居場所であると言われて自然と頬に涙が伝っていた
嬉しいと心から思えた瞬間だった


「シカマル、聞いてくれますか?」


私の秘密とサスケとの関係を…





2014.1.8 完成

次回、ついにシカマルに正体を暴露してしまいますが、その前にサスケとの関係を明らかにするのが先ですかねw
相変わらずシリアスーな感じがしばらく続いてハッピーエンドで終わりたいです!



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