私と仕事どっちが大事なのとかいう女にはジャーマンスープレックス



「あ、あの鬼の副長に妹が?!」
「まじか!まあ、DNAしっかりしてるわ。美人だもの」
「え、でも瞳孔開いてないよ?」


なんて、隊士たちがザワザワと騒いでいると
開かれたままの襖からまた人影が覗いた。



「ったく、うるせェんだよ。何事だ。」


そこにはあからさまな不機嫌オーラを出しながら
煙草をプカプカさせている真選組副長、土方十四郎。



「ふ、副長!」
「ハッハッハッ、トシ、いいところに来た。」


頭にハテナを浮かべ部屋をぐるっと見渡す彼は
何がなんだか分からないと腑に落ちない顔をしている。




『トーシッ!会いたかったよー!』

「グアッ!な、誰だ、コノヤ……、て、」


身体めがけてトシへダイブするあたし。

ジャンプして両腕を首に絡ませて抱きつくと一瞬声をあらげるが(ビビリのため)、すぐにあたしだと気付いて肩に手をやって目を丸くさせていた。



「ゆずぽん、…っお前なんでここに!」


両肩を捕まれたまま、前後にブワンブワン揺さぶられたので気持ち悪い。
幼気な18才の少女の頭パーンってなりそうだよ。


そんな頭パーン状態のあたしを気にとめず、
彼はというと質問を豪速球で投げかけてくる。


「なんで来ると一言連絡しなかった!ひとりできたのか?なにしに?いつ来た?どうやって…っていうかお兄ちゃんの手紙の返事書きなさいっっっ!!!」



この状態にギブアップ寸前なあたしは誰かに助けを求めようとしてみたが、近藤さんは笑ってるし他の隊士の方に至っては口をポカンとあけて呆然としている。



ため息をひとつ付いて肩に置かれたトシ兄の腕を握り止め、ゆっくりと口を開く。



『さきほどミツバ姉と江戸に到着しました。兄上も変わりなさそうで何よりです。』

「…ゆずぽん、お前…女らしくなって…っ。
お兄ちゃんは嬉し…っ……い?」


『兄上もほーんとお変わりなく、』



ジャキッ─


ニタリと笑みを浮かべ隠しておいたバズーカをセットする。

「え、ちょ、ゆずぽん?え?」

『死にさらせェェェェエ!!!』



チュドォォォォオオォォオン!!

「「「「ふ、副長ォォォォォォ!」」」」




本日二度目の爆撃に、隊士たちも驚きを隠せずにいる。


頭をプスプス言わせながら次は胸ぐらを掴んで振り回す鬼の副長。


「テメッ!何しやがんだ!殺す気か!」

『あら、ちょっとした照れ隠しですよ、お兄様』 


そんな二人のやり取りを見て一人の隊士が呟いた。


「…沖田隊長、だ」

「ガハハ、確かにゆずぽんちゃんと総悟は瓜二つだな!昔からトシをからかってばかりだった」

『ちなみにこのバズーカは総悟がくれたんだよ』

「銃刀法違反でしょっぴいてやろうか、コノヤロー」

『ま、トシに会えたからもーいーや。』



そう言ってバズーカをしまい持ってきた荷物を持つ。


「え、何。もーいーやって?え、飽きるの早くない?え?」

「あれ?ゆずぽんちゃん、どこ行くの?」


トシが横でぼやくのを見なかったことにして、自分の荷物を軽くまとめて準備をしていたら近藤さんに問われる。



『ん?総悟の話したら会いたくなっちゃった、追いかけに行ってくる』



部屋にいた山崎さんと原田さんを捕まえて江戸を案内してもらうことにした。


『道案内してくださいね』

さ、行きましょう!と、手を引いて部屋を出ようとすると、トシ兄がふたりの隊士をガシッと引き留める。



「山崎、原田、お前らあいつに変なマネしたら切腹だかんな。」


黒い笑みを浮かべながらシスコンを公にしている鬼の副長。

「「っり、了解ですっっ!!!」」

『過保護』

「江戸は武州と違って危ねんだよ!」

『いーもん、総悟に守ってもらうから』


その名前が出るとまた煩く「あいつはダメだ、お兄ちゃんみたいな人にしなさい」とグチグチ言ってきたので聞こえないふりをして部屋を出て行った。







部屋を出て少し歩いたところで山崎さんが口を開いた。


「、にしても副長の妹さんとはビックリしましたよ。それにだいぶゆずぽんちゃんを気にかけてたね、昔から?」


ちょっと半笑いなところを見るとやはり、トシも江戸で格好つけてたんだろうなとおかしくなった。


『ふふっ、昔から過保護で心配性。正真正銘のシスコンなんです。』



そう言ってまだ騒いでいる兄を振り返って見る。



「ゆずぽん!知らない人に着いてかない!迷子になったらお兄ちゃんに電話!」


そんな過保護なトシも、喧嘩っぱやくて剣を握るトシも、あたしは大好きだったりする。



(『あたしもなんだかんだ、ブラコン…』)


「え?なんか言った?」

小さな声で呟いたモノの山崎さんの地獄耳に反応したらしく、ヘラッと笑って『何にも』と答える。




こんな恥ずかしいこと、二度と口にしませんよーだ。








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