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雨の日の万事屋─
「銀さん、最近元気ないですね」
窓から雨を見ていたのを新八の声に振り向き部屋に目をやる。
「そーかー?」
「しょうがないアル。ゆずぽんと別れてハートはボロボロネ、男は女々しいから引きずるってマミーが言ってたネ。」
「うっせー、ガキには大人の恋愛は分かんねーよ!それにまだチャンスあるかもしんないからね?まだ挽回すっからね」
「女は男は上書き保存だけど、男はずっと新規保存するらしいネ。振られた相手も一生死ぬまで自分を好きだと勘違いし続けるってマミー言ってたネ。」
「お前ェのマミー何てこと吹き込んでんだよ!!」
神楽の言うことにイライラしながらも、
内心図星だったりするのでそれ以上の突っ込みはできない。
まだ別れて半月ほどしかたってはいないが、いまだにゆずぽんが「ただいまー」なんて言ってこの万事屋に顔を出しそうな気がしてウズウズしてる。
「ったく、俺ちょっと外出てくらァ」
「え、ちょ銀さん、雨振ってますよ?」
「いんだよ、大人の男は雨のほうが心落ち着いたりすんの。アダルトな世界なの。」
「とか言ってメソメソ思い出に浸りたいだけアル、過去の恋愛を都合良いように思い出にするのが男アル」
「酢昆布モサモサ食ってるガキに言われたくねェんだけどぉぉ?!」
軽く舌打ちをして外を出ると雨は少ししか降ってなかった。ビニール傘を持って階段を降り、かぶき町をぶらつきに足を向けた。
何度も通ったこの道も、今じゃ懐かしい。
一緒にスーパーまで買い出しに付き合ったり、団子食いに行ったり、ただ散歩がてら歩いた日もあった。
(「少し前のことなのにな、」)
今でも右隣を振り向けば、アイツの笑顔がありそうな気がしてあえてそっちに顔は向けない。
実際居ないことに頭では分かっているから。
もしかして、何て思ったりしても
そんな推測は全て裏切るのを分かってる。
【『─銀ちゃん、』】
今でも鮮明に覚えてる声を
頭ん中で響かせながらまた一人、寂しくなってみたり。
人との付き合いっていうのは不思議なもんで、「好きだ」なんて言えばその気持ちは膨らんでく。でも「嫌いだ」なんて思っても嫌いになることは出来なかったり、
(─ケッ、どうせなら嫌いになる方法でも調べてからどっか行きやがれ)
そんな強がりを一人、
頭で考えながら歩いてると目の前にずっと会いたかった人の姿が見えた。
(─っ、…ゆずぽん……)
傘をさして、街を歩く昔の恋人は
もう自分の知ってるアイツじゃない気がして切なくなる。
ビニール傘を持ち上げよく見ようとすると、アイツの隣には俺じゃない他の誰か。
「…─、ゆずぽん、そろそろ送りやしょうか」
『あ、いいよ。家くらいひとりで帰れる。子供じゃないのよ?』
そう言いながらふわっと笑うゆずぽんの横には沖田くん。
手には何か紙袋を持って、何か買い物していたようで。自分がもう居場所がないことを目の当たりにして眉をしかめる。
そこからただ茫然と二人が背中を向けて立ち去る姿は、自分の中の何かが壊れていくのが分かるくらい絶望的だった。
(…他に好きな奴いんなら勝ち目ねぇか)
そう思いながら、体を反転させ今まで来た道を引き返す。
ずっと見たかったあの笑顔も、もう自分には向けられていない。
隣の場所も、もう自分の特等席ではない。
「にしても、沖田くんかー。公務員だしな、貧乏人の俺とは比べモノになんねェわ。」
雨の中聞こえるか、聞こえないかほどの声で独り言を吐く。
「あの二人が結婚したらアレだな、子供とか絶対かわいいよねー。目とかクリックリだしィ?こんな死んだ目になんないしィ?」
自嘲じみた笑いをしながらとにかく歩いた。少しでも早く、あの二人から離れたくて─。
「や、もしかしたら俺の遺伝子ちょこーっと入ってたりして?絶対ェ、サラサラヘアになんかさせねェから、天パのDNAの濃さ舐めんなよ?」
そこまで言ってふと、足を止める。
降り続ける雨を見上げて今までよりまたさらに小さくなった声で呟く。
「好きだ、ゆずぽん──」
もう、格好つけるのは止めよう。
お前ェの嫌いになり方が全然わかんねェ。
ゆずぽん、お前が居ねェとつまんねんだよ。だからいつか、有るか無いか、そんな奇跡を信じて、
ずっとこの町で、変わらないままで、
お前を待ってるから。
いつか、また──。
──次の日
『銀ちゃーん、ただいま』
その声に過剰に反応してパジャマのまま玄関へ走っていくと少し照れながら微笑むゆずぽんがいた。
「─お、おかえり…なさい」
『苺牛乳、買ってきたよ』
昨日町で見た紙袋の中から苺牛乳とお菓子をたくさん見せて俺に手渡す。
「…ばーか、どこまで買いに行ってたんだよ」
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_/ ⌒ ⌒ \
/)) (●) (●) ヽ あとがき
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/ ノ、_ヽノ_ノ ̄)
/ / /フ_/
L_/\ \(
坂田さんの失恋ぽいけど最終的にはくっついちゃった話デスタ。正直失恋ネタ書くの初めて。なにがなんだか分かんなくなる件。