短編 | ナノ
プリガムとプリクラ

「なあなあプリ撮ろプリ!」
「ブンちゃん女子か」
「脳みそまで砂糖まみれなんだろうね」

いつもの帰り道、夕暮れ時の街中を歩いていた仁王と苗字は丸井の声に立ち止まった。きょうは真っ直ぐ帰宅コースとなるはずだったが丸井の指は学生が群がっているその場所を指さしていた。

「い〜じゃん撮ろうぜ〜」
「えー」
「えー」
「なんだよお前らノリわりー!てか名前女子だろ?率先して撮れよ」
「だって丸井と一緒に撮るメリットないじゃん?」
「ある。俺が可愛い」
「ブンちゃんより俺のがプリチーぜよ」
「私になんのメリットもない上に何かムカつく」

丸井に仁王共々引きずられ、あれよあれよという間にプリ機へと連れ込まれた。仁王はJKの並に揉まれてげんなりしている。元々人混みが苦手な彼にはただの拷問だ。

「しんどい…女子の群れしんどい…」
「大丈夫か仁王…」
「なんだよ2人ともテンション低すぎだろぃ」
「だるい」
「しんどい」
「あーもー俺が200円出すからお前ら100円出せよぃ」
「え、無理矢理連れてきたのに金とるの」
「ブンちゃん鬼じゃー」
「わかったわかった!全部出せばいいんだろぃ!」
「うぇーい!」
「丸井様様じゃのー」

荷物を置いてタッチ画面の前に立つ。まあ連れてこられた時点で出す気は全くなかったが奢りとなれば話は別だ。

「よっしゃ美白や!」
「目の色変えやがって…」
「うるさいな〜あんたらの顔面レベルに真っ向勝負なんて無理なんだよ!勝てないんだよ!言わせんな虚しい!」
「そんなことないナリ。名前はかわいいブタさんじゃ」
「貶してるよねそれ。貶し以外の何物でもないよねそれ。どう考えたってブタは丸井でしょ!」
「誰がブタだ誰が!てか背景どれにすんの?俺こだわりないんだけど」
「白にしたら仁王が消えそう」
「たしかに」
「失礼じゃなおまんら…」
「じゃあテキトーな!」

仁王は「任せる」と未だにだるそうだ。照明が明るすぎると文句も言っている。銀髪が光に当たって透けてるし、肌も白いしほんとに映るんだろうか。そんなことを考えながらなんとか選択を終えて、ようやく撮影となった。

「あたし一番後ろがいい」
「なんでじゃ」
「少しでも小顔に…小顔がいいの…」
「でも俺が前に行くと名前が隠れてしまうじゃろ」
「じゃあみんな後に下がればいいんじゃね?」
「それじゃ意味が無いよね?!とりあえず丸井は前!あっもうはじまっちゃう!」
「せわしいのぅ」

さんーにーいち!の掛け声と共にフラッシュが光る。何回か光ると、右側の落書きコーナーへ誘導された。

「……」
「……」
「……」
「最近のプリはすごいのぅ修正だらけじゃ」
「女子こえー」
「いや、シャッターの瞬間キメキメになるあんたら2人のが怖いわ。さすがカメラ向けられなれてるねぇ」
「へっへー。つか俺の目デッカ!仁王とか下まつげやべー!ギャルかよ!」
「化粧なしでこれだもんね…私の霞みよう…これが顔面偏差値…」
「みんな同じところに目も鼻も口もついとうのに不思議ぜよ」
「う、うわああああああッ」

仁王の言葉にわたし、撃沈。丸井は「仁王容赦ねーな!」と爆笑している。殴りたい。切実に殴りたいこの丸井ブタを…!!

「そ、そんなつもりはなかったんじゃ名前〜許してほしいナリ」
「やだもう帰りたい…」
「ダメじゃ撃沈しとる」
「いつまでいじけてんだよー機嫌なおせよー」
「らくがきに相合傘書くから許して欲しいナリ」
「まったく慰めにならない」
「俺の噛んでるガムあげるから機嫌なおせって!」
「出したらもうゴミじゃん!治るかアホ!」
「もー怒らんで名前ー大好きじゃからー」
「俺ら名前大好きだからいじめてんだよ〜分かれよ〜」
「そういうのうざいよ」
「ひっでーなおい!」
「まーくん傷ついた!」
「なんで自分ら被害者ぶってんの?」

らくがきが終わり、荷物を持って外に出る。印刷口の前で三人で待っていると、周囲のJKの視線が突き刺さる。さっきはこの波の中を突き抜けてきたからよかったけど立ち止まってるとザクザクくるな〜とか思いつつ「お腹空いた」と無意識に呟いた。

「んならこれ終わったらマックいこーぜ」
「おーいいぜよ」
「丸井にしてはいいこというじゃん」
「じゃ!俺テリヤキのセットな!シクヨロ!」
「俺はえびフィレオがいいナリ」
「えっもしかしてこれあたしが奢る流れ?」

出てきたプリを3人で分け合い、近くのファストフード店へ向かう。結局私が奢る流れはなくなった。よかった神様ありがとう。
それにしても、あーあ、もうすぐ卒業かー嫌だなーなんて思ってたから、3人でプリ撮れたのはよかったかも。良くも悪くもこの3年間、一番仲良かったのこいつらだし男女でも友情ってあるんだなーって思ったくらいだもん。ほんと思い出作りできてよかった。
次の日、仁王は私が半目になってたプリを待受にしてたし(消してほしい)丸井に至ってはLIMEのトプ画にしてて幸村に「ふーん俺抜きでプリ撮ったんだ、ふーん」って嫌味言われました。これ以上顔面偏差値上げられたら困るんでって丁重にお断りしといた。
そんなわたしは、プリを印刷して写真立てに入れてあるのは内緒。

20170210(卒業間近な3人)