特権かな








「へぇ、これなんか面白そうだね!」
「白、あんた顔だけで作品決めてるでしょ」



時刻は夕方。
明日はアカギ、しげる、赤木さん、そして私共にフリーなため、映画パーティでもしようかという話になった。
現在地は近所のDVD店、TUTAYAN。

赤木さんはまだ仕事。
今日はアカギとしげるの3人で来ていた。









特権かな










手にした『来たれ!天使の金 一億円!』というイケメン俳優が謎のポーズを決めるDVDをいともアッサリ拒否され、白は口を尖らせた。
ケチをつけてくる隣のアカギを見れば、何やら手にピンク色のパッケージが。


「なに?私にケチばっかつけるくせにこんな可愛い色のDVD借りようとしてるの?ぷぷ〜」

赤いハートやリボンの見えるDVDパッケージを指差して笑う白に、アカギは自慢げに喉を鳴らした。
その骨張った手がピンク色のDVDをずいっと白の目前に提示する。



「だってこの女優、白に似てたから」
「な…!!」



『先生と俺の調教日記』…!



「…で?この可愛い色のDVDは借りてもいいの?」
「か、返してきて!借りない!」
「クク…あんたに似てて面白そうなのに…」
「そういう問題じゃありませんっ!」



若干小声になりながらも耳まで紅潮させた白の反応に、満足気にアカギは笑った。
そこに隣のコーナーへ行っていたしげるがひょっこりと顔を出す。

気がついた白は慌ててアカギの背を押し出した。
しげるに変なもの見せないで!と、テレパシーで伝えようとまで試みた。
テレパシーの結果がどうあれ、とりあえず魔のDVDが別のエリアへ去ったことに安心を覚える。

しげるの方へ向けば、2本のDVDを手にしていた。




「…白さん、何個まで借りていいの?」
「うん?いくつでもいいけど…皆合わせて八枚までかなぁ!今日安いみたいだし…」
「じゃぁ、俺これにする」
「もういいの?」
「うん」


カチャンと白の持つカゴにDVDを入れて、隣に並ぶ。


「あとは白さんと見て回る」
「しげる…!」


気になるやつ見つかるといいね。と微笑むしげるを何とも愛おしく思い、白はカゴに入れられた『恐怖のビデオシリーズ』を甘く黙認してしまったのだった。
後に合流したアカギが会計を済ませ、三人はTUTAYANを後にした。

















─────夜 10時30分 赤木家





『ア……ッ……』

『…い、今…なんか声聞こえなかった…?』

『…!う、うしろ…かがみ……』


『…ッキャアアアアアアアアア』




「あああああああああああああああああああああああああああ」

「白、うるさい」

「鏡があああああああああああああああああああああああああ」



テレビの中で繰り広げられる恐怖なアレソレにすっかり体を震わせ、白は隣に座るしげるに縋り付いていた。

舐めていた。正直恐怖のビデオシリーズを甘く見ていた。
まさかここまで私の恐怖のツボを抑えてこようとは。

若干涙を浮かべながらも、白はじっとテレビを見つめていた。



「怖いなら見なけりゃいいのによォ…」
「…赤木さん、分かってませんね?怖いものほど見たくなっちゃうんですよ…ひっ」
「そういうもんかぁ?」


コクコクと頷きながら後ろの椅子でタバコをふかす赤木を見る。
何が面白いのか笑顔を浮かべてテレビの悲鳴に口端を上げてみせていた。


「まァ、結構面白いじゃねぇかこれ」

そう言って手にしたリモコンで音量を上げ、突然の爆音に白はさらに体を震わせる。
ぎゅうううっとしげるの肩に顔を埋めてその恐怖に耐え、過ぎては赤木を睨みつけた。


「赤木さん…!」
「ククク…おもしれぇ」
「おいジジイ、やり過ぎて泣かせないでよ」
「な…っ泣かないけど…!?」
「クク…どうだかな」
「う……」



意地悪く喉を鳴らす二人に、白は精一杯にしげるを抱きしめた。


「私にはしげるがいるからいいもん…!」
「白さん、近い…」


胸が。そう呟く間もなくしげるに男2人の羨ましそうな視線が。
まぁこれも俺だけの特権だよ。
そっと白の背に手を回し、しげるは嬉しそうな笑顔を浮かべた。



















──────────────






「しげる〜…」
「白さん、ちゃんと居るよ」
「…くっついていい?」
「どーぞ…。ふふ、俺でよかったの?アカギじゃなくて」
「アカギなんて尚更怖くて頼めないよ…」
「…俺は?」
「しげる…?あはっ、くすぐったい」
「……。さっきのお返し」
「あっ…ごめんね?怖くて、強く抱きついちゃった…」
「ふふ。全然平気だよ、寧ろ心地よかったから」
「…しげる〜〜!やっぱりいい子!」
「はいはい…」













───同時刻 アカギの部屋───



「おいおい…こりゃ激似だなぁ」
「でしょ。声はあまり似てないけど」
「音量小さくしちまえばいい、ほれ」
「いいな…この顔」
「俺はこっちの悶えてる顔がそそるなぁ…」
「悪趣味」
「クク…おめぇにゃ言われたくねぇよ」


《先生と俺の調教日記》











prev next

bkm

表紙に戻るっ…!