交わらないふたつの世界


何時からだっけ。
月の光が眩しくなって、血が綺麗に見えて、
なまえが隣からいなくなったのは。


“あなたも、我々羅刹隊の仲間ですよ”

違う違う!やめてくれよ!
俺はあいつ等と同じじゃない!

頭を抱えてその場にへたりこむ。
美しく輝く月を、正面から見れなくて。
羅刹となった今では、愛しい女を抱きしめることもすがることもできない。


もう、理性が保てない。自信がないんだ。
自分で自分がわからない。
気がつけば、知らない人間の返り血を浴びていた。
母に抱かれる幼子を、無惨に斬り殺した。なまえと同じくらいの歳の女の心臓を貫いたこともあった。


怖い。自分が怖くてたまらない。

『平助、』

いつの日か、

『大好きよ。』

この女を

『一緒にいさせて。』


殺してしまうかもしれないんだ。


だから突き放したのに、
何でこんなに悲しいんだ?
……あぁ、今頃あいつは泣いているんだろうな。
俺のことを思って。
涙を拭ってやることも、抱きしめることもできない俺は、
なんて最低なんだろうか。


交わらないふたつの世界
(黒と白。羅刹と人。俺となまえ。)
(変若水なんか呑まなきゃよかった、なんて)
(今さら懺悔にもならねぇな。)



▼鬼夜さまよりコメント
素敵な企画に参加させていただきありがとうございました。
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