そこへ行くことができたら


思えば私は報われない恋をしてばかりいた。…過去形ではなく現在進行形でそんな恋をしている
きっとそれは、「あの子がが大事に想われるみたいに私もあの人に大事に想われたい」と思ってしまうからで、その逆も然り。「あの子が大事に想う人を私も大事に想ってみたい」と思ってしまう
だから私は俗に言う「友達の好きな人を好きになってしまう」タイプの人間なのである。今回だって、あの二人にそういう、男女間に芽生える恋慕の想いでなくてもお互いがお互いを大事に想い合っているのを見て、私は彼を好きになってしまったのだ

「あっなまえ!」
「どうしたの、月子。東月くんこんにちは」
「こんにちは」

学園で女子は私を入れて二人ぼっち。当然仲良くなる訳で、私と月子は親友…だと思っている
彼女は守ってくれるナイトが三人いるけれど私にはそんな人はいない。それでも無事に過ごしてこられたのは、私に突出したものが何も無いから。月子のように可憐でも、包容力があるわけでも無い、だから大丈夫だっただけ。…あれ。自分で言ってて何だか虚しくなった

「あれ。月子、ケータイ鳴ってるみたいだよ?」
「え?あ!会長に呼ばれてたんだった!ち、ちょっと行ってくるね!」

パタパタと駆けて行く背中を見送っていると隣に人が並ぶのが分かった。東月くん、である

「月子は充実した毎日を送ってるんだね」
「みょうじさんは違うの?」
「あはは、私は毎日おんなじこと繰り返してるだけ。朝起きて学校通って星の勉強して、クラスメートと喋って、部屋に帰って課題やって寝るだけ。ずーっと同じ」

私の言葉に東月くんは
「それは俺たちも一緒だよ」と笑った。けれどそれは違う。彼らの毎日は中身がぎゅうぎゅうに詰まってる。私の毎日はすっかすかなのだ
階段を駆け上がり消えていく月子の背中を愛おしそうに見つめる東月くんの横顔をそうっと見やる。
今、私は言葉通り彼の隣に立っているけれど。心の距離はずっと離れていて。
心も、体も、彼の隣に立っていられたら。そのとき私は何を想うのだろうか。

そんな机上論ならぬ、空想論を考えたある日の昼下がりだった


▽瑛都さまよりコメント
提出させていただきます
切なく無いな。素敵な企画とお題なのにこんな文ですみません!
参加させていただけて嬉しかったです。参加させてくださった流星さま、読んでくれた方、ありがとうございました!

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