ゆめをかなえましょう






『綱吉サン、綱吉サン、これは一体…』


「見ての通りケーキだよ。ラ・ナミモリーヌの」



いつになくニコニコ顔のツナと、目の前に置かれたホールケーキとに交互に視線を遣る。




『いやあの…ケーキは分かるのですが、私が訊きたいのはなんでいきなりケーキを買ってきてくれたのかという事でして…』


「ん?だってなまえいつだったか言ってただろ『小さい頃ホールケーキを一人で食べるのが夢だった』って。だからそれを叶えてやろうかと思ってさ。
俺ってなんて優しい彼氏だろうなぁ」


『あー…うんそうだね…』




確かにずっと前にそんな話をしたような気もするし、そんな事を覚えててくれてわざわざケーキを買ってきてくれた気持ちはものすごく嬉しい。





でもね?






はっきり言って、有り難迷惑なんだよ。
(でも口に出しては言えない)



そりゃ今でもケーキは大好きだし、ホールケーキのひとつくらいお腹に収める自信もある。




それなのに今まで実行に移さなかった理由、それは




摂取カロリーが恐ろしいから。



ホールケーキ丸々一個なんて総カロリーどれだけあると思ってんのよ。





『えーと、あのー…気持ちはとても嬉しいんだけど、こんな美味しそうなケーキ私一人で食べるのは悪いし、ツナも一緒に食べよ?』




ニッコリと、小首を傾げてツナの機嫌を損ねないように誘ってみる。




「俺はいいよ。なまえが幸せそうな顔して食べてるの見てるだけで嬉しいから」




……が、失敗した。



こうなったら正直に言うしかないか。




『で、でもねホラ、こんな大きなケーキ一人で食べたら…その……体重とか恐ろしい事になりそうだし……ツナだって彼女が太ってるの嫌でしょ?』


「あー…」




私の言わんとしていることを理解したのか、少し考えている様子のツナ。


納得してくれただろうと思っていたら、再びニッコリ笑顔を浮かべて言った。





「もしお前が太ったら俺がダイエットさせてやるから安心しろよ。激しい運動とか得意だし?」




言いながら彼の笑顔に黒さが増していくのに嫌な予感しかしない。




「残さず食べろよ」




追い打ちをかけるように黒い笑顔で言い放たれた言葉に逃げられない事を悟った私は、諦めてフォークを取った。



美しくデコレーションされた、カットされていないケーキから少し大きめに一口分をすくい取る。

そのまま口に入れれば、甘すぎないクリームの風味が広がった。




『美味しい…っ』


「そっか」




実行するのを躊躇っていたとは言え小さい頃の夢が叶った事と、単純に美味しいケーキを食べた事とで自然と顔が綻ぶ。



次々とフォークを進める私を、ツナも嬉しそうに眺めていた。









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『ごちそうさまでした!』



結局一人でホールケーキを食べきった私。




「美味しかった?」


『うん!ありがとねツナっ…でもさすがにお腹いっぱいかも;;』


「じゃあカロリー消費する為にベッド行こうか」


『ん?』


「ん?」





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