DNAに刻まれたモノ





厨房で夕食の仕込みをしていると、珍しく山本さんがやって来た。



「おっなまえいたのか!丁度いいや、おにぎり作ってくんねーか?2、3個でいいからさ」

『おにぎりですか?ご飯もありますし構いませんよ』

「悪ぃな、具は何でもいいからさ」



すまなそうに言う山本さんに『いいですよ』と返して手早く3つのおにぎりを作った。

具はすぐに用意できる梅とおかかと昆布。





『どうぞ』



と3つを並べた皿を差し出せば、立ったままその場で嬉しそうに頬張る。

パクパクとあっと言う間に全て平らげて、はぁ〜…と息を吐いた山本さん。


グラスに冷たい麦茶を淹れて渡すとそれも一気に飲み干した。




「すっげー美味かった。サンキューな!」



まるで少年の様な笑顔で言われて自然と顔が綻ぶ。



『すごい勢いでしたねっそんなにお腹空いてたんですか?』



確か山本さんは数日間の任務から帰ってきたばかりだったはずだ。



「んーまぁそれもあるんだけど…実は、すげー米粒に飢えててさ」



ははは…と少し恥ずかしそうに鼻の頭を掻いた。



「俺、一日に一回は米食わないとなんか落ち着かないんだよなー」

『あっそれ分かります!私もパンとかパスタが続くと、無性にご飯が食べたくなりますもん』

「なまえもかー!こういう時ってやっぱ日本人だなって思うよな」

『ですねっ』



クスクスと二人顔を見合わせて笑う。





『じゃあ今度から山本さんの為にご飯常備しておきますよ』

「ははっありがとな!」



大きな手で私の頭をガシガシ撫でながら見せるその爽やかな笑顔に、胸の中がふんわり暖かくなった。




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