霧中
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遂にやってきました。

聖王都セイルーンの首都『セイルーン・シティ』




「はぁ〜‥‥やっぱり王都。城下町も入り組んでて大きいですね」

「ええ。ソフトクリームが実は名物なんですよ♪」

「わあっ こちらの世界に来てからソフトクリームは初めてです!」


「ゼロスさん!リオンさんもっ!
今はソフトクリームより父さんに会うことが先です!」


私たちのノンキな会話を先程から王宮に着くことを急いているアメリアさんに咎められる

「すみません
ついはしゃいじゃって‥‥」





異界黙示録(クレアバイブル)の手掛かりを求めて、白魔術の最先端だというこの都市へと訪れた私たち

私がこの世界に来てから初めての大きな街だ。



これまでの町とは違って文献などの資料が豊富で私もこの世界のことを一気に知る絶好の機会
そんなわけで、私もかなりテンションが上がっていた。

柄にもなく舞い上がってしまっていたわけでして




「まぁまぁアメリアさん
リオンさんはこちらにいらしてから初めての首都への来訪なので多めに見ては」

そのゼロスさんのフォローにアメリアさんはむぅと口を閉ざす


「そーよアメリアぁ〜
ちょっとは落ち着きなさいよー」

「そーだよ〜
そんなに急いでどーするんだよぉー」

「もちろん。父さんに会うためです!
セイルーンのことは父さんに聞くのが一番ですからっ」


「とほほ‥‥やっぱひそーなうのね
あー気が重たくなってきた
あの親父と会うこと考えただけで‥‥」

もごもごと愚痴を小さく零すリナさんに私とゼロスさんは首を傾げた

「あの親父?」

「セイルーンの第一王位継承者 フィリオネル王子のことよ
どーも苦手なのよね。あの巨大ドワーフ」

「セイルーンの王子はドワーフなのですか?」


ドワーフ、確か私の世界の物語にもいる空想の生き物だ
確か、小人のような背丈で‥‥髭をいっぱい蓄えててーあと、ずんぐりむっくりした体系のイメージが

「あははは‥‥ものの例えよ、例え」


んー。巨大、とのことだから小人ちっくでは無いんだろうけど

ドワーフ王子‥‥想像つかない




「リナさーん!
もうなにしてるんですか!クレアバイブルの手掛かりを探すんでしょ?
さぁっ 張り切ってまいりましょー!!」

確かに目的はそうだが、すごい張り切りっぷりだ

「けっ あんなこと言ってるけど自分が親父に会いたいだけじゃないのか?」

「あーゆーところはまだまだお子ちゃまね」

「まーまぁ、可愛らしいからいいじゃありませんか」

「そう言うお前さんもはしゃいでたもんな」


ガウリイさんの言葉にフォローに回るつもりが「う・・・っ」と言葉を詰まらせる


私もずっとテンションが高いままだったので、あまり人のことが言えたことでもないのが事実だ

今も、あー‥‥観光したい




「さ、あの城門を抜ければ王宮はすぐそこです」


アメリアさんに急かされるまま、城門を潜り抜ける



そこは閑散とした広場だった
アメリアさんは何か異変を感じたのか立ち止まる


「おい、アメリア
もうそこなんだろ?王宮は」

「ん?どうしたの?」

「街の者がいませんね」

「それに‥‥やけに兵士が多いな」

「セイルーンってそんな物騒な国なんですか」

「いや‥‥そんなことは‥‥」

ゼルガディスさんの言う通り辺りを見渡せば武器を持っている人がちらほら伺える
たぶん、あれが王宮の兵士ってやつなんだろう

何故かゼルガディスさんは私の発言に言葉を濁らせたけど、なんでだろう?



「おや?」

ゼロスさんが何かに気付いたように視線を上げた
その先を目で追うと、はためく旗。

「半旗‥‥」

「どなたか国の偉い方にご不幸があったようですね」

「まさかそんな‥‥」


アメリアさんは国のお姫様。

そうなると半旗が上がるような重役の方と知り合いなのは間違いないでしょうし‥‥
私たちには笑顔を見せてくれたけれど、垣間見える横顔が不安を隠しきれていない






とんとん



後ろから肩を叩かれ振り返ると少ししゃがんでこちらを覗き込むゼロスさんの姿

ちょいちょいと口元で手を招くので体ごと耳を傾ける

「リオンさん。僕の所要に付き合っていただけますか?」

「え。今から、ですか?」

如何にもこれから深刻そうな雰囲気なのに

「これから恐らくリナさんを筆頭にお国を巻き込んだ騒動が起こります」

「なら‥‥」

「ですから、丸腰のあなたには少々荷が重いかと思いまして」

「ぅ‥‥。」



確かに‥‥武器も持っていない。
魔法も使えない私は本当の意味での足でまといだ

こっちの世界に来た時に懐に入れていた鉄扇をまだ捨てずにいるけど
防御の手段にするにも心もとないのが現状。

「私にでも使える武器を探す‥‥ということですか」

「はいV
買い揃えてしまいましょう♪」

まぁ、だとしたら足でまといにならないうちに退散するのが賢い‥‥のかな


駆け出すアメリアさん、リナさん一行を見送り、罪悪感を抱きながらこの場から離れた




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