余徳
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結局今日の収穫は無く、湖を囲う森で野宿ということになった。



ひさびさにふかふかのベッドで眠れるかなって思ったんだけどな。



ゼルガディスさんは無事回収されて‥‥
そのあと精神的に傷を負ったみたいだけど、きっとゼルガディスさんなら負けないよ。

うん。




そんなこんなで今は食事(焼き魚)を終えて森の中を探索していた。

あんまり身を守る術をしらないから、みんなから逸れ過ぎると危ないけど‥‥たまには一人の時間も欲しいといいますか。



夜の森は空気も綺麗で、湖からくる風は涼しくてとても気持ちいい。
心を落ち着けるには最適な場所だと思う。

あんまり夜目が利かないのが、辛いところだ。

月明かりを求めてザクザクと森の中を歩いて行く



「アシュフォードさん‥‥」


「‥‥アメリアさん?」

少し遠くから聞こえる声。

そちらの方へ進むとアメリアさんとアシュフォードさんが月明かりの下、少し開けた丘の上で肩を並べて座っていた

なんだか、少ししんみりとしたシリアスな空気で
今、声をかけるのは無粋だと思いその場を退散しようと背を向ける。

それでも聞こえてくる会話にアシュフォードさんも過去に何かあった人なんだなと少し切なくなった。




うーん‥‥落ち着いて書き方の勉強もしたいし、月明かりが入る場所ないかな?

「リオンさん。」

暫く歩くと突如聞こえた、ここにいるはずのない聞き覚えのある声。


「ゼロスさん?」

背後に振り替えるも見知ったはずのその姿はなくきょろきょろと辺りを見渡す。
気のせい‥‥だったのかな

でも、あんなにはっきり聞こえたし。


「此方ですよ」


前でも後ろでもない。丁度真上から聞こえた声

反射的に上を見上げると木の枝に腰掛ける彼の姿があった
その姿を見つけた途端思わず笑みが零れてしまう



実は1人で歩いていた理由はもうひとつあったりする。
何故かひとりで行動していると唐突に彼が現れるのだ

初めのころはあんなに警戒していたのに、いつの間にか馴染んでおり何故だかゼロスさんの纏う空気が懐かしくて安心してしまう

リナさんの忠告もあるからあんまり信頼しちゃいけないってわかってはいるんだけど


「ゼロスさん!ずっとこんなところにいたんですか?」

「ええ。見物も楽しいものです。」

「そうでしょうね‥‥」

全く‥‥こっちは散々だったんですけど‥‥。
肩を落としながら恨めしげにゼロスさんを見上げると意にも介さない様子でいけしゃあしゃあと“ご苦労様でした”と言ってきた。

ふぅ。もともと面倒事という不幸な事態には慣れてるからいいけど
彼は木の上から降り立ち、心底疲れた様子の私のもとへ悠然と歩み寄る。

あんな高いところから軽々と‥‥


「魔法使えればあんな木の上でも楽々と飛んで行けるんですよね」

「浮遊(レビテーション)使えばいいじゃないですか」

「‥‥使えるんですか?」

「貴方に魔力と素質さえあれば」



にっこりと笑いながらかけられた言葉。

魔力。私にもあるのだろうか。



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