殷賑
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やはり、見知らぬ世界での慣れない冒険、旅というものは想像以上に過酷なもので。
早くも私は自分の限界を感じていた



それに文化の違いは勿論。一番不便と感じたのは‥‥

「リオンさん。頼まれていた本持ってきましたよ」

「あ、ありがとうございます。」

ゼロスさんがニコニコと調達してくれた本を渡してくれる。
その本を見た瞬間、受け取ろうとした手を思わず引っ込めたくなった。


う・・・受け取るだけで恥ずかしい!!

しぶしぶ受け取った本には、つい最近基礎を教えてもらって読めるようになった文字で大きく大きく「ブラスデーモンでもかける!かきかたのほん」と印字されているのがわかった。

絶対コレ私たちの世界で言う小学校低学年向けの本ですよね・・・。





そう。文字。


日本語が通じるのだから言語の方面で不便はないかな、と淡い期待を打ち砕かれたのがコレだった。


一般的に公用されている文字が全くの知らないものだったのだ

冒険を始めて早々のこと。初めて自分で料理を注文することにすら勝手がわからず緊張している中、リナさんに渡されたお品書きを見たときその事実が判明したのだが‥‥。


みんな。
その中でもガウリイさんにまで蔑むような、憐れむような視線を投げつけられた時は本気で穴を掘って籠りたいと思った。

今思い出しても居た堪れない。




「でも、リオンさんすっごく覚えるの早いですよね」

「確かに、もうこれも読めるようになったんだな。」

「それしか取り柄がありませんから。記憶力だけなら自信があるんですよ」


アメリアさんとゼルガディスさんに褒められて少し嬉しくなる。


確かに旅は辛いこと、大変なことが多いけど今まで食べたこと無いようなおいしいものとか、見たことない生き物とか‥‥初めてなことがいっぱいで悪く無いなと思い始めていた



何より、リナさんにガウリイさん。

アメリアさんにゼルガディスさん。

そして、ゼロスさんによくしてもらって


あの世界で、灰色の世界を生きていくよりずっと幸福なんじゃないかと思う。

かといってリナさんの無茶な行動に食事中の大乱闘。
まだまだ色々付いていけないことは多い。


ゼロスさんは時たま姿を晦ますものの、気がつくと再び旅の道中に戻ってきていて、その度に私に何かしらお土産を持ってきてくれた。

今回はこの書き方の本というわけだ。





「そろそろ次の街に着くわよっ」

先頭でガウリイさんと肩を並べて歩いているリナさんの言葉にみんな少しずつ歩調を上げる。

隣を歩くゼロスさんを見上げて私は問いかけてみた


「セイルーンはあともう少しなんですよね」

「ええ。次の街も首都が近いからかそれなりに大きいみたいですよ」

「大きい街‥‥ですか」


私が参っている理由は旅の疲れもあるのだが、一番の理由はリナさんにあったりする。

まだ道中共にして日は浅いが尽く面倒事というトラブルを巻き起こしていくリナさん。

それに付いていくのは持久力もかなり必要で、体力の少ない私には結構酷なことであった。



その中でも盗賊団の追手を撒くときは本当に命が無いかもしれないと思ったものだ。


いや、日本で運動とかしてたから全く動けないわけじゃないんだよ?
でもどうしても持久力は劣る。

幸いまだ魔法で吹っ飛ばされたことは無いのが唯一の救いなのか‥‥。





「面倒事・・・流石に起こりませんよね?」

「さぁ? どうでしょう?」

「そこは否定しきれん。」



ゼロスさんとゼルガディスさんの言葉に言いもえない不安を感じて私は小さく肩を落とした



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