契機
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「リオンさん、食事お持ちしましたよ」


病み上がり‥‥ということでまだ暫く安静にしなくてはいけないらしく

一通り自己紹介が済んだところで話はまた後でとその場はお開きになった。
やはり、私の状況はその場の勢いで話すのは不似合いな内容らしい。


「ありがとうございます。」

リナさんたちは食事を取りに下の酒場へ。
ゼロスさんは一度下へ降りて食事を持ってきてくれたらしい。


ベッドの近くにある椅子に腰を下ろした彼は甘い香りと湯気が上がっているコップ(中身はホットミルクだろうか)をトレイから自分の手元に置いた。
引き返す様子はないみたい。

「ゼロスさん、食事は取らなくて大丈夫なんですか?」

「ええ、食べれますか」

「あ、はい。いただきます」

慌てて食事の乗ったトレイを受け取り膝の上に載せる。


とは言っても、やっぱり私自身この状況に上手く頭が付いていけていない。

さっきは勢いで異世界という言葉に頷いてしまったが、そんなの夢かそれとも実は私の世界の片隅なんじゃないかと微かながらに希望を抱きたくなるのも事実で

あまりすらすらと喉を通ってくれそうにもない。

スプーンを手に持ちゆっくりと緩慢な動作でスープを口に運んでいく。


「‥‥何これおいしい。」

私がいた世界。
日常で飲んでいたものとそう材料や味付けは違わないと思う。

けれど、何かが、目が覚めていくような‥‥そんなおいしさが温かさと共に全身に広がっていった。

やはりお腹が空いていた所為もあり夢中でスープを口に運んでいく、気がつけば皿の中身は空になっていた。



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