1.死神

ピッ、ピッ
「…ア、ノア…!!死なないで…!」
「お姉ちゃ…」
ピー―ーーーーーーーー
「いやあああああああああっ!!!!」

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
 やあ、ボクの名前はノア。元、人間。で、今は死神。
生前の記憶はなく、気付いたら地獄で大きな鎌を振り回していた。
覚えているのは、だれかの叫び声だけで…。
地獄に落ちた魂を破壊するのが僕らの役目。
今も魂を1つ破壊したところで、マントは返り血だらけだ。
「ふう」
ボクは鎌を地面に置き、そばにあった岩に腰かけた。
それと同時にボクの頬を涙がつたった。
ボクはふと悲しくなるときがある。
生前の記憶もなく、ただこうして毎日血ばっかり見ている自分がむなしくなるのだ。
「コラーーっ!!」
「ぐへっ」
突然頭に衝撃が走った。
「まーた泣いてるっ!」
「痛ぁ・・・」
「何度言ったらわかるの!?」
このキーキー言う子はリディー。
ボクの仕事仲間だ。
ボクより年下のくせに気が強くって仕切りたがり屋だ。
「そんなんじゃ仕事になんないでしょっ!この弱虫!」
「だってぇ〜」
「リディーは平気なの?地獄での仕事…」
するとリディーはニヤリと笑って言った。
「あら、何言ってんのよ?」
「ゲームみたいで、面白いじゃない」
ゾクリ、と鳥肌が立った。
「あははははははっ!」
リディーの言葉にはいつもぞっとする。
残酷…彼女にはこの言葉がぴったりだ。

ボクより2歳も年下なのに…。
「そ、それよりさぁ」
「え?何?」
「今日は回収の仕事は無い…よね?」
「神サマから指令が来てたわよ」
「え〜っ」
ボクがそう言ったらリディーがまたガミガミ言いだした。
リディーに教えてもらったんだけど、
ボクたちのように幼くして死に、死んだときの生きることに対する思いが強かった子供は死神になり、
生き返るチャンスを与えられるのだとか。
その生き返る方法が地獄に堕ちた魂の破壊を1000回、現世で死にゆく魂の回収を1000回…
つまり合計2000回の仕事をこなすことで命のカケラがボクらにたまってゆき、
元の自分として生き返ることができる…というもの。
ボクだって生き返れるのなら生き返りたいけど、
僕たちみたいな子供に記憶までなくさせてこんな仕事をさせるなんて神様も残酷だ。
「ほらっ行くよ!」
リディーがボクの手をぐいッと引っ張った。
「ちょ…っ、リディー!」
ボクは地面に置いておいた大鎌をあわてて拾い、
現世へと続くゲートへと向かった。

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