月が綺麗でしたね、

「別に、嫌いになったわけじゃないんですよ」

囁きとは違う無声音で黒子はそう言って名字を見る。感情の掴めない、きっとその目には何も移してはいないくせに、名字に何か期待させるような。

「ただまあ、愛せなくなってしまっただけで」

分かりますかと首を傾げる黒子に名字はそっとため息を吐いて答えた。分からないと喚いたところでどうなることでもないだろうし、そもそも名字自身どうしたいのか、分かってすらいないのだから。

「……今夜は満月ですね」

ああそうか。あれは去年の今頃のことだっただろうか。たくさんのことがあったような気もするけれど、今はどれひとつとして思い出せない。けれど、もう。
それでいいと思うのだ。今更思い返すことがいったい何になるだろう。ただひとつ思い返せることがもしもあるとするならば、多分。

あの時絡めた指の感触と月に照らされた儚い空色だけ。





20150416 月が綺麗でしたね、


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圧倒的なコレジャナイ感

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