一枚の写真に閉じ込めた

楽しいのかな。
オレンジ色の空に向かってレンズを構えて、シャッターを押すなまえにそう思う。
けれど一枚一枚、撮る度に確認しては頬を緩めているからきっと楽しいのだろう。
写真を撮っている時のなまえに話しかけちゃいけないっていうのは何となくの俺のルール。何でかってことはそんな明確に分かってることじゃないけど、何となくなまえは話しかけられたくなさそうだから。ちなみになまえが愛用してるカメラが俺に向けられたことはない。人を撮るのは好きじゃないんだって、いつかの時に聞いた気がする。
こんなかっこいい被写体がいるのにもったいないよってそん時は笑ったと思うけど、内心なまえの好きなことに俺は介入できないんだって、ちょっとさみしかったとかそういうのは秘密。でも考えてみれば俺はバスケが好きだけど、あえてなまえと1on1やりたいかって聞かれると正直そうでもないし、それなら青峰っちとやる方が好きだから、多分なまえもそういうことを言ってるんだと思う。
なまえから少し離れたところで何をするでもなくぼーっとしていると、不意になまえが俺を呼んだ。今日は終わるの早いなぁって思いながら振り向いたら、聞き慣れたシャッターの音。
驚いてなまえを見つめていたらなまえは笑った。

「モデルらしからぬ表情だね、これ」
「え、えぇ……だっていきなり撮られるとか……うわぁ、俺今どんな顔してた?」
「世界で一番好きな顔」
「へ、」

たまになまえはすごく恥ずかしいことを平気で言う。じわじわと恥ずかしさが募る俺を見ながら、穏やかに笑っているなまえを軽く小突いた。ズルい。

「涼太は俺が今まで見たどんな景色より綺麗だよ」
「……ほんと、」
「ホント」
「……お世辞じゃなくて」
「なくて」
「…………なまえも綺麗、」
「ありがとう」

やっぱり照れない。ズルい。
人を撮るのは嫌いじゃないのって訊いたら、涼太ならいいかなって思った、って返ってきて照れた。やっぱりなまえはズルい。
__今度の休日にでも、なまえにバスケを教えてあげてもいいかなって、ちょっとだけ思った。



20150216 一枚の写真に閉じ込めた、僕らの青春とかまあそういうの

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