僕もお腹が空きました。

※緑間さん吸血鬼。とても短い。








いくら鋭いと言えどどれだけいっても所詮は歯。鈍い痛みが走るであろうことくらいは自然に覚悟していたが、思ったよりも痛みは薄く、肌に異物が食い込む感触だけが違和感としてあった。
じゅる、とお世辞にも綺麗とは言えない音を立てて血を吸われる。食事で音を立てることが嫌いなこの男にしては珍しいことだ、とぼうっと霞む意識で思う。手持ち無沙汰に待つだけというのも暇なので、そろりと指通りのいい緑色の髪に指をくぐらせた。
するすると髪を梳きながら首元に寄せられている緑間の顔を窺う。
生真面目な印象を与える綺麗な翡翠の瞳は今は恍惚と細められ、首元に吸い付く唇は何とも言えず扇情的で、思わずごくりと口の中の唾液を飲み込んだ。それに気づいたのか否か、緑間がゆらりと視線を上げて目を合わせ、緩慢な動作で首元から唇を離す。そんな緩やかな動きも彼にしては珍しい。

「どうした、」

問いかけてはいながらもまだ食事の方に意識が持っていかれているのだろう、どこか上の空な緑間の声に苦笑を洩らして「後でいいよ」と返した。緑間は特に食い下がることもなく、再度首筋に口をつけた。
__さて、終わったら俺もいただきますしようかな。


20150215 僕もお腹が空きました。

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