ラッキーアイテム

「送る」「え、いやいいよ。緑間君疲れてるでしょ。早く帰りなよ」「こんな時間に女子を1人で帰すわけにはいかないのだよ。襲われたらどうする」「でも私襲われるような見た目してないし……」「見た目の問題じゃないのだよ」
というような押し問答が続いて結局なまえの方が折れた。確かにこの時間は1人で帰るには少々危ないかもしれない。っていうか見た目否定しないんだ。そのことにがっくりするような、むしろ緑間らしいと納得するような。
といっても、流石に帰る間中沈黙というのは少々頂けない。
振る話を一瞬考えて、口を開いた。

「緑間君っていつもあんな遅くまでやってるの?」

怪訝に眉を顰めた緑間に「自主練」と言い添えた。

「いや……いつもはもう少し早い」
「今日練習キツかったでしょ? 早めに切り上げれば良かったのに」
「今日は少し調子が悪かったからな」
「えっ、そうなの?」

いつも通り外さないなこの人、と思いながら見ていたのだが。考えてみればいつもよりシュート本数が少なかったような気がしないでもない。いや、まあ正確に全て数えていたわけじゃないし、何となくだが。

「……おは朝の順位があまり良くなかったのだよ」
「……何位だったの?」
「11位だ」
「ラッキーアイテムは?」
「トーテムポールだ」
「やだおは朝鬼畜……」

そんなもの持っている男子高校生がこの世にいるのか。

「これだ」

目の前にいた。
一体緑間真太郎という人物はどれほどおは朝に命をかけているのだろう。

「ちなみにお前は何座だ?」
「私? 水瓶座」
「よかったな。確か今日の占いでは1位だったのだよ」
「そうなの? あ、でも確かに今日は色々とツイてたかも」

まあ帰りは遅くなったのでこれからこってり怒られるのだが。いつも人気な購買のいちごパンが残り1個で残っていたこととか、今日は授業で一度も当てられなかったこととか、友達数人とじゃんけんしてあっさり独り勝ちしたこととか(飲み物を買いに行く人を決めていた)、よく当たると噂のおは朝で1位だったのなら納得できる。

「ホントによく当たるんだねー」
「ああ」

何故緑間自身が得意気なのかはこの際指摘しない方がいいだろう。何か可愛いしそっとしておこう。

「あ、私の家そこだから。ごめんね送ってもらっちゃって」
「いや、構わないのだよ」
「それじゃあまた明日ね。お休みなさい」
「ああ、お休み」

家に帰ると両親にがっつり怒られた。もう遅いのに何やってたの、などと最初は本気で怒られたが、その内呆れたようにため息を吐いた。

「何かいいことでもあったの?」
「え、どうして?」
「だって顔、にやけてるわよ」

しょうがない子ね。母はそう言って笑い、「ご飯の用意するから」とキッチンに入って行った。

***

『今日の1位は水瓶座のアナタ! 特に今日は恋愛運に恵まれます! もしかしたら今日、意外なカレに恋に落ちちゃうかも? ラッキーアイテムは__』





ラッキーアイテム:猫のストラップ
(鞄につけた子猫のストラップが、)
(少しだけ音を立てた)



→後書きと補足

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