05

誠凛は順調にインターハイ予選を勝ち抜き、予選トーナメント準決勝にまで駒を進めた。そして__、準決勝決勝当日。
千秋は自販機から缶コーヒーを取り出したところで声をかけられた。

「あれっ、千秋っち?」

何だこのパターン多いなと思いながら振り向くと、案の定黄瀬が手を振っている。

「黄瀬か。……えっ、と……海常の…笠松さん、であってますかね?」

黄瀬の後ろにいる見覚えのある顔にそう言うと、彼は驚いたように目を見開いて、おう。と答えた。

「あ、紹介するっスねセンパイ! この人は帝光の時のチームメイトで、」
「柊千秋と言います。初めまして」
「あ、おう。ってか何で俺の名前……?」
「あ、月バスで見たんで!」

笠松はふぅん、と頷くと、千秋の差し出した手を軽く握り返した。

「っつか黄瀬、飲みもん買うなら早くしろよ。始まるだろーが」
「了解っス!」

笠松は黄瀬をそう急かした後、千秋を見て不思議そうに首を傾げた。

「お前誠凛?」
「はい」
「じゃあもう行かないと始まるんじゃねーの?」
「そうなんですけど、こいつに見つかっちゃったんで」

後ろで飲み物を選んでいる黄瀬を指差すと、笠松は納得したのかああ…と呆れた顔で黄瀬を見やった。「懐かれてんだな」という言葉に「まあ。面倒ですけどね」と返した。黄瀬が聞いていたらまたひどいと喚いたであろうが、飲み物を選んでいて聞こえていないので良しとする。

「お待たせっス!」
「じゃあ行くぞ。さっさと行くぞ」
「何買ったんだ?」
「ミネラルウォー…」
「モデルか」

あ、声揃った。

***

「そういや今日の緑間っちの運勢知ってるっスか?」
「いや…、見てないけど」
「かに座1位だったんスよ」

黄瀬からそう聞いて、おは朝当たるからなぁと呟くと、驚異的なんスよね……と返ってきた。

「もうあれ占いっていうか予言?」
「あー確かに!」
「そんな当たんの?」
「まあ大概は…。黒子はどうだったんだよ?」
「最下位!」

うわぁ…これ負けるか……? そう呟いた千秋に、黄瀬は気持ちで負けちゃ駄目っスよ! と威勢良く言った。いやまあそうだけど、実際に戦うの選手だから。
準決勝は東京三大王者のひとつ、正邦高校との試合だ。強固なディフェンスを売りにしたチームで、その技術は古武術を応用しているのだとか。リコから聞いていた相手校のデータをひとさらいする頃にはもう会場についていた。

「ったく、お前がちんたら飲み物なんか買ってるから始まってんじゃねーか!」
「いてっ!」

遠慮なく黄瀬をぶっ叩く笠松に苦笑しつつ、スコアボードに目をやる。

「えっ…12-0!?」


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