02

ある日の昼休みのことである。

「なぁ、千秋は入部しねぇの?」

1on1以降、何故か懐いてきた火神がそう訊ねる。

「あー、まあ……ってかお前よく食べるな」
「え? 別に普通じゃね?」
「いや、普通ではないかな…」
「僕からすれば千秋君も充分食べてますよ」

横からさらりと会話に入ったのは黒子だ。自前の弁当ひとつと購買のパン2、3個がデフォルトの千秋はそう指摘されて顔を顰めた。

「黒子は食わなさすぎ。部活やってんのにそんなんじゃ駄目だろ」
「…でも僕はこれで充分ですから」
「駄目だ。そんなんじゃ肉付かない。最低限の体は必要なんだからもうちょい食え」

ぽい、とパンを放られて、黒子は渋々ながらも受け取る。もぐもぐと咀嚼し始めた黒子を他所に千秋は火神に訊ねた。

「で? 何だよいきなり」

今までそんなこと聞かなかったのに、と言外に匂わせた千秋に火神は歯切れ悪く答える。

「や、まあ、何となく?」
「お前、嘘下手」

じとり、千秋に半目で睨まれて、火神は首を竦めた。

「……来週の月曜の朝さ、本入部届け出しに屋上行くんだけど、」
「何でまた屋上なんかに」
「知らねーよ。カントクに言われたんだよ。入部届けは月曜朝8:40分の屋上でって」
「ふぅん、で?」
「一緒に行かね?」
「やだよ」

考える素振りもなくばっさり断られて、火神はがくりと項垂れる。
いや、まあさ、分かってたけどさ、もうちょっとこう、考えてくれても良いじゃん。

「……ま、頑張れよ。黒子、火神」

多分碌なこと考えてねーし。千秋の呟きの意味を2人が知るのは月曜の朝のことである。


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