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唐突に始まった全部員ロッカー大公開の流れについうっかり晒してしまった雑誌や新聞での誠凛の記事を纏めたスクラップ集を散々にからかわれ部室の奥の方でむくれていると黒子が音もなく目の前に立った。差し出されたファイルは先ほどまで話のネタになっていたスクラップ集だ。

「先輩たちも照れ隠しですからあんまり拗ねないでください」
「あー、うんまあ……分かってるけど」
「もしかしてこれ、帝光の時のもあったりします?」
「嫌でも目に入ったしな」
「君は昔から案外まめですよね」

黒子からファイルを受け取って、千秋は苦笑をもらす。「誠凛のは前にさつきちゃんに言われてからだったからあんまりまめじゃなかったよ」「そうなんですか?」首を小さく傾ける黒子に頷いた。何が情報として役に立つか分からないから記事のスクラップなんかもオススメだよ、と言われたのは確か夏休み前のことだっただろうか。多分あれは塩を送られたのだと思う。慣れないこともあって大変だろうけど頑張って、と。そういう細やかな辺りはさすがの一言だ。
ぱらぱらと適当にページを捲っていくといくらか覚えのあるページに行き着いて手が止まった。去年のIH予選中の月バスの記事だ。写真には相手をかわす木吉の姿。
先日の対秀徳戦の後、さつきに聞いた話が思い浮かんだ。



「木吉鉄平さん? もちろん覚えてるよ。一度対戦したことあるし、何より有名だもんね」

そう言って振り返ったさつきに頷いて千秋は何事か思案するように視線を上げる。

「夏休みの時からさ、さつきちゃんが言ってくれたみたいに色んな記事のスクラップやってたんだけど、」
「あっ、そうなんだ、嬉しいな」
「うん。それで、去年の月バスの記事の後からぱったり木吉さんが出てこなくてさ…多分怪我したからなんだと思うけど、ちょっと気になって。何か知ってることあったりする?」

さすがに一年も前の情報だ。詳しく調べようにも情報源が少なすぎる。それならいっそ自分の身近で確実な情報を持っているだろうさつきに聞くのが手っ取り早いと言えばそういうことになる。一応他校という立場上教えてくれるにしろ上限はあるだろうけれど、自分の学校のメンバーのことだ。そこの辺りは私事ということで考えてもらえるとありがたいところではある。
さつきはしばらく考え込んでからふっと千秋を見上げた。

「去年のことだから、私もそこまで詳しく知ってるわけじゃないの。だから話せるのは知ってることと推測だけ」

そう前置いてさつきは口を開いた。

「試合データによると、木吉さんはIH予選トーナメントの決勝を途中退場してるの。原因は膝の怪我。C同士での衝突で起きた事故、って言われてるけど……」

Cは身体的接触が多い分衝突によって体を痛めることも多いポジションだ。それを聞く限りは不自然そうな点はない。
言葉を濁したさつきを促すように首を傾げるとさつきは潜めるように少しだけ声を低くした。

「その時の対戦校がね__」


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