06

各々注文したものがきて、雑談しながら食べていると、がらりと店の戸が開いた。
何気なくそちらを見やると、先ほど試合を終えた誠凛のメンバーが揃っている。

「黄瀬と笠松!? ……と千秋!」
「ちっス」
「呼び捨てかオイ!」
「お疲れー」

上級生を呼び捨てにした火神に軽く手刀を入れつつ、そう答える。
席が足りないから、と千秋たちと同じ席に座ったのは火神と黒子である。

「なんなんスかこのメンツは…。あと火神っちなんでどろどろだったんスか?」
「あぶれたんだよ。泥はほっとけよ。っちつけんな」
「黄瀬早く食えよ」
「焦げんぞ」
「この短時間で何でそんな息ぴったりになってんスか、笠松先輩と千秋っち!」

騒がしい黄瀬を宥めつつスルーしつつ黒子にメニューを渡す。
黒子と火神がメニューを覗き込むと同時にまたしても扉が開いた。

「すまっせーん、おっちゃん2人ー。空いて…………ん?」

秀徳と書かれたオレンジ色のジャージを着た__緑間と高尾が入ってきて、千秋ら含め全員が一瞬言葉を失った。

「…なんでお前らここに!? っつか他は!?」
「え、ああ…いやー真ちゃんが泣き崩れてる間に先輩たちとはぐれちゃってー。ついでにメシでも、みたいな」
「……高尾、店を変えるぞ」
「あっおい真ちゃん!」

緑間が戸を開けた瞬間、先ほどまでより一層雨足が強くなった。もう既に台風の域に達しているのではないだろうか。緑間はさすがにこの中を出歩くのは躊躇したのか、そっと無言で扉を閉めた。
改めて店内を見回した高尾は千秋たちの座っている席を見て一瞬にやりと楽しげに笑うと、ややわざとらしいくらい声を上げた。

「あっ海常の笠松さん!?」
「…何で知ってんだ?」
「月バスで見たんで! 全国でも好PGとして有名じゃないすか! うわー同じポジションとして話聞きてぇなぁ! ちょっと混ざってもいいっすか!?」
「え…? 今正直祝勝会的なムードだったんだけど…」
「気にしない気にしない! さぁあっちで!」
「あ、おう…」

そう半ば無理矢理に高尾が笠松を連れ出してしまえば、空いた席に座るのは必然的に緑間になるわけで。だがそうわかっていても一向に席に座ろうとしない緑間にため息を吐く。

「真太郎、座れよ。いつまでそこに突っ立ってるつもりだ」
「……だが、」
「だがも何もないっつの。そこに立ってたら店の迷惑になるだろーが」

渋々席に着いた緑間だが、どうやっても重たい空気は拭えないらしい。

「…ってか何で千秋は緑間のこと名前呼びなんだよ?」
「フン、そんなことも分からないのか馬鹿め。幼馴染だからに決まっているのだよ」
「分かるか!! ……って、え? 幼馴染?」
「ああうん…」

適当に返事をして、黒子を横目で見やる。黒子は意図を察したのか、おいていたメニューを取り上げた。

「とりあえず何か頼みませんか。お腹空きましたし」
「俺もう結構いっぱいっスから、今食べてるもんじゃだけでいいっスわ」
「俺も今食べてるやつでいいやー」
「黄瀬、よくそんなゲロのようなものが食えるのだよ」
「何でそういうこと言うんスか!?」

さすがに現在進行形で食べているものを嘔吐物(ゲロ)のような、などと言われるのは黄瀬が不憫である。

「いか玉ブタ玉ミックス玉たこ玉ブタキムチ玉…」
「何の呪文っスかそれ!?」
「頼みすぎなのだよ!」
「大丈夫です。火神君1人で全部食べるんで」
「ホントに人間か!?」

火神の胃袋がブラックホールなのは知っていたが、さすがに食べ過ぎではないだろうか。

「っていうか千秋君、黄瀬君と一緒だったんですね」
「会場に行く途中で偶然会ってさー」
「試合も一緒に見たんスよ! ねー」
「ソダネ」
「何で片言!?」

四捨五入したら190になる男が小首傾げて「ねー」なんて言えるか! そう言うと「大丈夫っスよ! 千秋っちならイケる!」と返ってきた。何がイケるんだおいこら、と小一時間膝詰めで問い詰めたくなった千秋だった。顔面を鉄板に押し付けてやりたい……。



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