03

桃井さつきは桐皇学園高校の屋上への扉を開くと、そこに見知った青を見つけて声をかけた。

「もー青峰君やっぱりここにいたー!」

さつきが声をかけた少年、青峰大輝は煩そうに顔を顰めてさつきを見下ろした。

「んだよさつき。昼寝の邪魔すんな」
「昼って、やっと昼休みになったんじゃない。ずっとサボってたんでしょ。ほんっとにもう……」

昔からの付き合いである。今更互いに遠慮などというものは存在しない。
青峰はさつきの小言には一切耳を傾けず、ひらひらと手を振った。

「用事ねーなら話しかけんな。俺今から寝るとこなんだからよ」
「ちょっ……もう! 青峰君、夏目ちゃんの進学先知ってる?」
「あ? 夏目の? ……知らねーよ」

気怠そうな表情が一瞬ぴくりと動いたことにさつきは気づいている。さつきは「だよねぇ、」とわざとらしくため息を吐いた。

「2年の時に喧嘩しちゃってそのまんまだもんねぇ。1年以上ろくに口利いてないなら知らなくて当然かぁー」
「さつきテメェ喧嘩売ってんのか?」

わざとらしい挑発にあっさり乗ってきた青峰の言葉をスルーして、さつきはふふん、と得意気な笑みを見せる。

「この前分かったんだけどねー、夏目ちゃんなんと秀徳に居るんだって」
「秀徳? ……っつったら緑間んとこか」
「そ! 意外だよねぇ。まあ夏目ちゃんのことだし、偶然ミドリンと志望校被っちゃったってだけなんだろうケド、ね」

青峰は一瞬面白くなさそうに顔を歪ませたくせに、精一杯興味のないような素振りで「あっそ。で?」と再度寝転んだ。
素直じゃない態度にさつきはむっ、と口を尖らす。

「誰かに取られちゃったって知らないよ?」
「……意味分かんねー」
「ホントに分かんないの?」

さつきの責めるように少しきつくなった口調にも青峰は頓着せず、「分かんねーよ」とだけ答えた。



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