初デート

時は日曜朝。天気は晴れ。高尾は遊園地の門前でとある人物に会い驚きを露わにしていた。

「お前……」
「どうも。お久しぶりです高尾君」
「黒子? 何でいんの?」
「高尾君こそ怪しい格好で何してるんですか」
「尾行!」
「爽やかですね」

まあ僕も似たようなものです、という黒子に詳細を尋ねれば、桃井さんが、という言葉が返ってきた。桃井と言えば桐皇の? と首を傾げる。
桃井は独自の情報網で(果たしてどんな情報網なのかは知らないが)夏目たちのデートの場所を突き止め、黒子に「でも私その日クラス会があって……、テツ君行って詳しく教えてくれないかなぁ?」とお願いしたらしい。

「別に桃井さんにお願いされなくてもそこまで分かってたら興味あるんで行くんですけど」
「もしかして黒子こういうの……」
「好きです」

尾行とかちょっと燃えませんか……! と力説する黒子もとりあえず物陰に引っ張り込んでおいていつ来るだろうかと様子を伺う。影が薄いとは言え、相手は青峰と夏目である。気をつけるに越したことはない。気づかれればラブラブムードは半減するだろうし。いやそんなものがあるのかどうかは分からないが。

「あっ来た」

やはり先着は夏目である。夏目自身も先に来ているわけはないと周りを見渡しすらしない。すでに待ち人の雰囲気である。

「珍しくおしゃれしてますね、珍しく」
「なー。本当に珍しく」

ここまで珍しくを連呼されるのも少々かわいそうだが、本当に珍しいのだ、仕方ない。一度緑間と高尾、夏目の3人で出かけたことがあるのだが、無地Tシャツにパーカージーンズには絶句した。もうちょい色々考えようぜと。何だよそのユニ○ロ信者! とつっこんで最低限のおしゃれのイロハを叩き込んだ気がする。それからはちょっとマシになった。
しかしそれにしても夏目のレベルとはそぐわないほどのクオリティの高さだ。似合っていないわけじゃない。むしろばっちり似合っている。だからこそおかしいのである。

***

「……来ませんね」
「約束の時間って10時じゃねーの? 20分過ぎたんだけど」
「遅刻ですかね……」
「初デートで?」

青峰君ですし。黒子はそう呟いてため息を洩らす。
夏目も不安になったのか先ほどからしきりに携帯を閉じたり開いたりしている。

「なかなかかわいそうな絵面ですね……」
「おう……。って、あ、来たっぽい」
「これは盛大に拗ねられますよ青峰君」

さすがの青峰もこれには申し訳ないと思っているのか「意味わかんない。遅れるとかありえない。寝坊って何それ」といった夏目の小言を大人しく聞いている。夏目は夏目で素直に聞かれて毒気を抜かれたのか、仕方ないなぁと苦笑を浮かべて青峰の腕を引っ張った。

「今日は存分付き合ってもらうからね!」

初デートで彼氏の20分の遅刻にも関わらず雰囲気をきちんと盛り上げる寛大さに涙が出そうだ。

「もう夏目いい子すぎるんだけど……。俺が彼女にほしいわ……」
「この辺りの対応の仕方を見るに何となく予想してたんですかね」

遅刻する予想をたてられるというのも少々悲しいものがあるのかもしれないが。



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