地獄の沙汰も嫁次第 | ナノ

地獄式鍼灸術と浄玻璃鏡の使い方






とある昼下がり。


閻魔庁ではぎっくり腰になってしまった閻魔大王の治療をしようと、鬼灯が鍼の本を読んでいた。


「ふむ…なるほど。大体、理解しました。」

「大体じゃ困るよ!ていうか素人の君になんて頼めないから!鍼をやるならプロを!白澤君を呼んでよ!」


白澤という名前にピクリと反応した鬼灯はいかにも嫌そうに顔をしかめる。


「あんなの呼ぶくらいなら…自分で失敗した方がましです!」

「わしがましじゃないよーっ!」


言ってるそばから鍼を懐から取り出した鬼灯に閻魔大王は思わず声を上げる。


「いいから任せなさい。」

「信頼できるとかできないとか以前にスポークでしょ!?それ!!」

「普通の鍼じゃ刺さりませんので。ほら、動かないで。」

「誰かぁぁぁーっ!!」


閻魔大王が叫んだ瞬間、扉が開き琴音とシロが入ってきた。


『あら?閻魔様に鬼灯様。何をなさっているのですか?』

「琴音ちゃん!」

「琴音。来てくれたんですね。」


すたすたと琴音の元に寄る鬼灯の姿にほっと安堵する閻魔大王。


『鬼灯様、どうぞ。』


いつものようにお弁当を差し出す琴音に鬼灯はありがとうございます、と受け取った。


「ねぇ、ここで何してるの?」


シロの質問に閻魔大王は苦笑いしながら答える。


「いや〜実はぎっくり腰になっちゃって。」

『まぁ、それは大変ですね…。私に何かできることがありましたら、仰って下さいね。』

「ありがとう、琴音ちゃん。君はほんとに優しいなぁ。」


そこへ猿の柿助と雉のルリオもやって来た。


「あれ?閻魔大王と鬼灯様と琴音様?」

「どうしたんすか?こんな所で。」

「ぎっくり腰で動けないのです。」

「そう…。困ってるんだ。」

「腰痛かぁ。何が効くっけなぁ?」


鬼灯と閻魔大王の言葉に柿助はん〜…と考え込む。


「温めるのと、鍼と、あと圧をかけるとか!」


提案しつつ、自分の過去を思い出した柿助は床にうずくまる。


「全部俺の死因だ…。」

「お前の中でそれ相当トラウマなんだなぁ…。」


(俺、どうかしてました…!)


柿助は思わずカニの姿を思い浮かべながら手を合わせた。


「柿助はカニへの罪滅ぼしで神獣として桃太郎のお供になったんだよ。」

『そんなに桃太郎と猿カニは繋がりが深かったんですね。』

「ほんと、結構シビアな話だね。あ痛たたたっ!」

「そりゃそうと腰が痛いのはつらいですねぇ。」


言いながらルリオは閻魔大王の腰に乗り、温めるように座った。


「あぁ〜あったかくて気持ちいいや。」

「卵あっためてる親鳥みたいだね。」

『ルリオさんはいいお父さんになれるかもしれませんね。』

「ルリオがお父さん…?想像したくないなぁ…。」

「しなくていいんだよっ!!」


ルリオが突っ込む中、閻魔大王は柔和な表情を浮かべる。


「あぁ〜アニマルセラピーが、今のところ一番効く。」

「………」


それを見ていた鬼灯は、ちょっと失礼して、と言いながら閻魔大王の閻魔大王の首元に何かを置いた。


「あぁ〜冷たくてこれはこれで気持ちいい。鬼灯君、これな〜に?」

「これは…ヒルです。」

「ぎゃあぁ〜!!ヒル〜!ちょっと何やってんの!」


思わず振り返る閻魔大王に鬼灯はチッチッと指を振る。


「血行をよくするために地獄ヒルを使って瀉血を行おうと思いまして。」

「どんな蟲使いだよ!」


((鬼灯様は蟲も手なずけられるのですね…!))


琴音は尊敬の眼差しを鬼灯に向けるのだった。











「ふむ…次はどうしますかね…。」


結局良い方法が見つからず、鬼灯は再び本を読み始めた。


「ん…?なるほど。指圧という手もありますね。」

「へぇ〜。まぁ鍼やヒルよりはそっちの方がいいかなぁ。」

「では。」


そう言うと、鬼灯は閻魔大王のつむじを力一杯押した。


「痛たたたぁーっっ!!」

「昔、ここを押すと下痢になるって迷信ありませんでした?」

「だからって何で押すの〜っ!」


その瞬間、鬼灯は更に"ズブッ"と頭に指を突き刺した。


「ぐわっ!!痛ぁぁっ!!!もうイライラするなぁ!」

「ではこの内関というツボを押しましょう。イライラを静めるツボです…!」


言いながら鬼灯はこれまた思いっきり手首を指で押し、閻魔大王の手から血が噴き出した。


「うわぁーっ!!動脈動脈!君が爪立ててるの動脈〜っ!!」

「大王はもう亡者なんですからいいでしょ?別に。」

「死なないからつらいの!」


思わず閻魔大王は鬼灯の手を振り払う。


『だ、大丈夫ですか?閻魔様。』


琴音は慌てて閻魔大王のそばにより、持っていたハンカチを手首に巻いた。


「あぁ、ありがとう、琴音ちゃん。鬼灯君、君もこのくらい優しくしてよ。」

「チッ…うるさいです。わがままを言う子は地獄に堕ちますよ。」

「えっ?あぁ…いや…そうだけど…。」

「あと、気安くうちの妻に触れないでください!」

「えぇ!?わしから触れたんじゃなくて、琴音ちゃんが好意で…」

「分かってますが、それでも嫌なものは嫌です!」

「り、理不尽〜っ!!」


叫ぶ閻魔大王に鬼灯はまた本に視線を移す。


「じゃあ…今度は温熱治療のために、」

「焦熱地獄に連れてってくれるの?」

「自力で行け。」

「やっぱりね…。」

『私が付き添いましょうか?』

「琴音ちゃん…!」

「……大王。」

「ひぃっ!!あ、い、いや、大丈夫だよ〜!ありがとう。」

「その代わりにお灸を据えてさしあげましょう。」

「え、遠慮しとくよ…。」


断る閻魔大王をよそに、鬼灯はお灸を据える。


「わっ!ちょっと大きくない!?」



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