▽少しの変化でも





「じゃあまた後でな。」

『うん』


"ちゅ"


シャルルカンはなまえに軽く口づけると、彼女の自室をあとにした。


2人はなまえの部屋でのんびり過ごす予定であったが、シャルルカンが仕事が入ったため、中止になった。


しかし、シャルルカンはどうしても彼女と過ごしたかったため、仕事が終わった後にまた来ると約束したのであった。


『シャル…やっぱ八人将だし忙しいよね…。体とか大丈夫かな…。』


なまえはシャルルカンの出ていったドアを見つめながらぽつりと呟いた。


『帰ってきたらマッサージでもしてあげよっかな』


そんなことを言いながら、椅子に座ろうと、くるりと方向転換した時だった。


"フラッ…"


『あ…れ…??』


いきなり目眩を覚え、なまえはバランスを崩しかけたがなんとかその場に留まった。


『私も疲れてるのかな…。』


そう思ったなまえは今度はベッドへ歩き出そうとしたが、先程よりも強い目眩を覚え、その場に倒れ込んでしまった。


『い…た……』


((どうしたんだろ…なんか…頭がぼーっとする…動けない…))


"どうしよう"


そう思ったとき、自室のドアが開き、誰かが部屋へと入ってきた。


「やっぱりな。」


((この声…))


その人物はなまえの側まで来ると、そっと抱き上げた。


『シャル…?』

「あぁ。もう大丈夫だから。」


そう言うとシャルルカンはなまえをベッドへと寝かせた。


『なん…で…』

「さっきキスした時、いつもより熱かったから、もしかしてと思ったんだよ。」

『え…』

「そしたら案の定、お前が倒れてたって訳。」


戻ってきて正解だったな、と言いながら1人うんうんとシャルルカンは頷いた。


『でも…仕事は…』

「大丈夫。近くにいた従者に王サマに伝言を頼んだから。
だから、お前は余計なこと考えずに寝てろ。風邪引いてたんだろ?」

『うん…多分。昨日から少しだけ体調が悪くて…。ごめんね…シャル…。』

「気にすんなって。今、薬師呼んでやっから。」


にかっと笑うと、シャルルカンは部屋を出た。









「ふむ…風邪ですな。」

「やっぱそうかぁ…。」

「風邪薬をお出ししましょう。時期に熱も引くはずです。」

『ありがとうございます…。』

「お大事に。では、私はこれで。」


軽く会釈すると、薬師は部屋を出た。


「よかったな。大したことなくて。」

『うん…。迷惑かけてごめんね…。』

「だから気にすんなって!全然大丈夫だから。
さっき、王サマからの伝言で今日はなまえについててやれって言われたし。」

『そうなの…?』

「あぁ。だから今日の俺の仕事はお前の看病。」


そう言って微笑むシャルルカンになまえも微笑み返した。


『ありがとう…。』

「ん、じゃあ俺、お粥作ってくるから。何か食べてからじゃねーと薬飲めねーし。」

『うん…そうだね。』

「よし、じゃあいい子で待ってろよ。」


シャルルカンはなまえの頭を優しく撫でると、部屋を出た。


((ほんと…何から何までやってもらって申し訳ないなぁ…。あ、でもシャルって料理できたっけ…?))


ふとそんなことが頭によぎったが、


((まぁ作ってくるって言ったんだし…きっと作れるんだよね…。))


と思い直し、なまえは楽しみだなぁと言いながら頬を緩めた。


数分後、シャルルカンはお粥をもってなまえの側まで歩み寄った。


「なまえ、できたぞ。」

『ありがとう、シャル。』

「おう。起き上がれるか?」

『うん』


そう言うと、なまえは少しシャルルカンに支えてもらいながら上半身を起こした。


「ほら、あーん」


起き上がったなまえにシャルルカンはお粥をスプーンで掬い、ふーっと息を吹きかけて少し冷ますと、なまえの前にスプーンを差し出した。


『え…自分で食べれるよっ』

「いいから、いいから!」


シャルルカンにそう言われ、なまえは渋々口を開けた。


"ぱくっ"


「どうだ?うまいか?」

『うん…!すごくおいしい…!けど…これ…すごい恥ずかしい…』

「いいじゃねーか、たまには。」

『シャル…わざとやってるでしょ…。』


嬉しそうに言うシャルルカンをなまえは熱で潤んだ瞳で軽く睨んだ。


「あはは!!バレたか。けど…」


シャルルカンはそっとなまえの頬に手を添えると


「その顔は反則…。誘ってるの?」


と言いながらにやりと笑った。


『なっ…違うよ…!!』


真っ赤になったなまえは顔を背けた。


そんななまえを見てシャルルカンは笑うと


「冗談、冗談。ほら、続き。」


と言うとまたスプーンを差し出した。


『もう…』


文句を言いながらもなまえは素直に口を開け、お粥を食べた。


そんななまえを見ながら


(あー…危なかった。さっきの可愛すぎて病人なのに襲うとこだった…。ほんとかわいすぎなんだよ…)


と心の中で呟いた。


「よし、全部食べれたな。じゃあ次は薬な。」

『うん』


シャルルカンは風邪薬を取り出すと


「口移しで飲ましてやろっか?」


と悪戯な笑みを浮かべて訊ねた。


『ダメだよ…。そんなことしたらシャルに風邪がうつっちゃうじゃない。』


真面目に返され、シャルルカンは不服そうにすると


「別に、なまえの風邪ならうつってもいいけど。」


と答えた。


『もう…またそんなこと言って…。でも…シャルがどうしてもしたいって言うなら…してもいいよ…?』

「え…」


今度は予想外の言葉にシャルルカンは目を見開いた。


「い、いいのか!?」


なまえは頬を染めつつ、こくんと頷いた。


それを確認すると、シャルルカンは


「じゃあ…お言葉に甘えて…。」


と言って、水と薬を口に含むと、なまえに口づけた。


『ん……』


なまえはシャルルカンから水と薬を受け取ると、こくっと飲んだ。


(やべぇ…予想以上にいいな…これ…)


そんなことを考えながらシャルルカンは唇を放すと


「飲めたか?」


となまえに尋ねた。


『うん…ありがと…』


そう言うと、なまえは恥ずかしそうに笑った。


「なぁ…なまえ…」

『ん…?』

「キスしていい?」

『え…!!』

「今のでしたくなった。」

『だ、だめだよ!!本格的にうつっちゃう…!』

「そしたらなまえが看病してくれるんだろ?」

『それは…』

「俺、なまえに看病されたいし。」


なまえはため息を吐くと


『じゃあ…1回だけね』


と言った。


「了解」


そう言うと、シャルルカンはなまえに優しく口づけた。


なまえが酸素を吸おうと少し口を開いたところに舌を入れ、絡ませたり、吸ったりと、シャルルカンはなまえの口内を楽しんだ。


くちゅ…と水音が静かな部屋に響き、なまえは頬を赤く染めた。


そして苦しくなると


『んんっ……しゃるっ……』


と名前を呼び、シャルルカンの服をきゅっと掴んだ。


するたシャルルカンは名残惜しげに唇を放した。


『はぁ…はぁ…苦しいよ…!病人なんだから手加減してよ…』

「悪ぃ…なんか熱のせいか、いつもより熱くて、気持ちよかったから…つい。」

『ばかっ…!でも、看病してくれてありがとう』

「ん…じゃあ、もう寝とけ。そしたら治るだろ。」

『うん…おやすみ…シャル…』


なまえが瞼を閉じると、シャルルカンは額にそっと口づけた。


「おやすみ…」









数分後、なまえの様子を見に、友達のヤムライハとピスティが訪れた。


"コンコン"


「なまえ、大丈夫?お見舞いに来…」


言い終わる前に、ピスティとヤムライハは部屋の中を見て口をつぐんだ。


そして2人は顔を見合わせ、くすりと笑うと部屋をあとにした。


そこにはベッドで眠るなまえと、その横で、顔と腕をベッドにのっけてシャルルカンがなまえを見守るように眠っていたのであった。



END

Next→おまけ

    

←back

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -