▽
『紅覇、何食べてるの?』
「ん?キャラメルだよ〜。」
言いながら、僕はキャラメルの入った箱をなまえに掲げてみせる。
『へぇ〜。おいしそう。』
「なまえも食べる〜?」
『え…いいの?』
「もちろん。」
僕がにっこりと笑えば、なまえも嬉しそうに笑う。
「はい、どうぞ。」
『ありがとう。』
なまえは僕から受け取ったキャラメルを口に含むと、"ん〜っ"と声をあげる。
『甘くておいしいっ!』
「でしょ?」
『うんっ!』
幸せそうな表情を浮かべるなまえに、僕も嬉しくなる。
「ね、なまえ」
『なに?』
「これ、僕に食べさせてくれる?」
『え…!』
途端に真っ赤になるなまえ。
照れているところも愛らしい。
「ね、いいでしょ?」
甘くおねだりすると、なまえは恥ずかしげにこくりとうなずく。
そこで、彼女にキャラメルを渡そうとした瞬間――
"ちゅ"
唇が重なった。
それに驚いている暇もなく、上唇をペロリと舐められ、口を開くと、口内に入ってくるキャラメルと熱い舌。
それを受けとると、唇が離された。
顔を離した彼女の表情は相変わらず真っ赤であったが、呆然としている僕に首をかしげる。
『あれ…?紅覇、どうしたの?』
「いや…てっきり、"あ〜ん"ってしてくれるんだと思ってたから。」
『え!?』
自身の勘違いに、より一層頬を真っ赤にするなまえに僕はニヤリと口角を上げる。
「いや〜びっくりしたよ〜?なまえにしては大胆な行動取るからさぁ〜。」
『ご、ごめんなさいっ…!』
そう言って恥ずかしさからか逃げようとするなまえの腕を掴む。
「ちょっと〜逃げないでよ〜。僕は怒ってるわけじゃないんだから。むしろ、嬉しかったんだよ〜?だからさ…」
そこまで言ってから、僕はうつ向いている彼女の耳元に唇を寄せる。
「今度は僕からしてあげる。」
『え……』
驚いて顔をあげた彼女の唇に、僕は自身のそれを重ねた。
そのまま彼女と同じように上唇をペロリと舐めると、うっすらと開かれる。
『んんっ……!』
その隙を逃さず、キャラメルを口内に入れ、それをお互いの舌で溶かしていく。
『んっ……ふっ…ぁ…』
キャラメルが溶けてからも、甘い感覚が心地よくて、舌を吸い上げたり、絡めたりを執拗に繰り返すキスを続ける。
『んんっ…こう…はっ…』
すると、なまえが僕の名前を呼びながら、弱々しく胸を押し返してきた。
そこで渋々唇を離すと、力の抜けたなまえが僕の胸に倒れ込んでくる。
そんな彼女を抱き止めながら、優しく髪を撫でる。
「ふふっ、力抜けちゃうほど気持ちよかったの?」
『なっ……!』
「でもまぁ確かにいつもより甘かったしねぇ〜。おいしかったよ、なまえ。」
"ごちそうさま"と言って、今度は触れるだけのキスを送ると、彼女は恥ずかしそうに視線をそらす。
そんな彼女を見て、たまにはキャラメル味のキスもいいなぁなんて思った。
END
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