▽僕だけを見て




今日は鮫柄水泳部との合同練習の日。


というわけで、私たち岩鳶水泳部は鮫柄学園に来ております。


「やっほー!凛ちゃん!今日はよろしくね!」

「おう、よろしく。」


にっと笑って渚くんに答えたのは鮫柄の部長であり、私の彼氏の凛。


凛とは今年で付き合って3年目で、既に婚約までしている。


『凛!』


すっかり部長が板についている凛に駆け寄ると、私を見た凛は柔らかな笑みを浮かべた。


「おう、なまえ。元気してたか?」

『もちろん!』


わしゃわしゃと頭を撫でてくる凛に満面の笑みを浮かべると、凛も嬉しそうに笑ってくれる。


「もう〜会って早々いちゃつかないでよ〜!」

「そうですよ凛さん!今はそういう時間じゃないんですよ?」

「うるせーよ。つーかお前ら、なまえに手出したりしてねぇだろうな。」


じっと軽くみんなを睨む凛に私は思わず苦笑いする。


『心配しなくても大丈夫だよ、凛。私は凛だけのものなんだから。』

「あたりめーだ。でなきゃ許さねぇ。」

『ふふ、はいはい。』


さも当然といったように言う凛が可愛くて、ぽんぽんと頭を撫でると照れたのか、子供扱いするな、とちょっぴり怒られた。






「よし、じゃあ練習始めるぞ。集合ー!」


凛がパンパンと手を叩くと、鮫柄の部員が集まった。


「じゃ、今から合同練習を始めます!」

「「「「お願いしまーす!」」」」


練習が始まると、さっきとは打って代わり真剣な表情で泳いでいる凛。


その姿がかっこよくて、見つめているとプールから上がってきた凛がこちらに歩み寄ってきた。


『お疲れさま、凛。』

「おう。」


言いながらスッと片手を差し出してきた凛に私は首を傾げる。


『なに?どうしたの?』

「なにって、タオルだよ!タオル!」

『へ?』

「お前、マネージャーなんだろ?」


そう言われてあぁ、と納得したけれど私は岩鳶のマネージャーであるわけで…。


『でも、私は岩鳶の…』

「今日くらいいいだろ。それとも、お前はうちのマネージャーはやりたくねぇのか?」

『!!そんなわけないでしょ!』

「じゃあ決まりな?」


にっと笑みを浮かべる凛に苦笑しつつ、江ちゃんと相談して私は本日限定で
鮫柄のマネージャーとなった。







『お疲れさまです!どうぞ。』

「あざっす!」

「すみません、こっちにも貰えますか?」

『あ、はい!どうぞー!』


練習が終わると、私は鮫柄のみなさんにマネージャーとしてタオルやボトルを渡していく。


「いや〜助かります!あざっす!」

『いえいえ。お役に立てて私としても嬉しいです。』


笑顔で答えると、鮫柄のみなさんも笑ってくれた。


その事を嬉しいなぁと感じていると、突然後ろから肩に手を回され引き寄せられた。


『きゃっ!』


驚いて振り返ると、そこには不機嫌そうな凛の姿が。


「おいお前ら、あんま近づくんじゃねぇよ。」

「え…あ、す、すみません!」


謝りつつ慌ててその場を去っていくみなさんに申し訳なさが募る。


『もう〜そういうこと言っちゃダメでしょ。これじゃ、マネージャーの仕事ができないじゃない。』

「いんだよ別に。」

『よくないよ。凛が鮫柄のマネやってって言ったんじゃない。』


私の言葉に凛は少し考え込むと、口を開いた。


「あれ、やっぱ取り消す。」

『え?』

「お前は、俺専属のマネージャーだ。」

『えぇ!?』


驚く私を他所に凛は満足げに笑うと、スッと手を差し出す。


「ほら早くしろよ。マネージャー。」

『………はぁ』


相変わらず独占欲の強い凛に苦笑しつつ、私は凛の頭にタオルをのせわしゃわしゃと拭く。


「わっ、自分でやるって!」

『ダーメ。凛ちゃんはお子様なんだから私が拭いてあげる!』

「ちょっ、いいって!」

『ふふ、うりゃうりゃ〜!』

「っ……やーめーろって!」


その瞬間バッと腕を掴まれ、動きがピタリ止められた。


と、同時に交わる視線。


その瞬間――


"ちゅっ"


唇に触れるだけのキスを落とされた。


スッと顔を離すと、凛はクスリと笑って赤くなっているであろう私の頬を撫でた。


「これでもまだ子供だって言うか?」

『!!』


こういうことをさらりとやってのける凛は本当にずるいと思う。


これだから私は凛には敵わない。


『い、言わない…けど、』

「けど?」

『こういうことをこんな場所でするのはダメだよ。』

「大丈夫だ。タオルの陰になって他の奴らには見えてねーよ。」

『そういう問題じゃないでしょ!』

「つーかこんなことで真っ赤になってどうすんだよ。結婚したら、もっと恥ずかしいこととかすんだぞ?」

『そ、それは…っ!』

「おい」


横から飛んできた声にそちらを見ると、呆れたような表情の遙くんと苦笑いを浮かべている真琴くんがいた。


「こんなところでいちゃつくなバカップル。」

「あ゙?別にいいだろ。」

「あ、えっと、邪魔しちゃってごめんね。けど、そろそろ挨拶をしてほしいんだけど…。」


真琴くんの言葉にはぁ…とため息をつくと、凛は分かったよ、と返事した。


((これでまた、しばらくお別れかぁ…。))


みんなの方へと歩き出した凛の後ろ姿を見ながら、寂しいな…なんて考えていると凛がくるりと振り返った。


「なまえ」

『ん?なに?』

「今日、まだ時間あるか?」

『え?あ、うん。』

「じゃあミーティング終わったら俺の部屋行くから、待ってろ。」

『!!うんっ!』


嬉しくて元気よく返事した私に、凛も嬉しそうに笑う。


どうやら今日はまだもう少しだけ、愛しい彼といられるみたいです。


END


     

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