▽そのままで






『ん……』


目を覚ますと、真っ白な天井が目に入った。


それから僅かに消毒の臭いもする。


(あれ…?ここ…保健室…?)


そう思いながら体を起こすと、パタパタと足音が聞こえてきた。


誰だろ…?とぼんやり考えていると、カーテンにシルエットが映った。


「なまえ、いるか?」


聞き覚えのある声に"うん"と答えるとカーテンが開かれ、ハルくんが顔を覗かせた。


そして、私の顔を見るなり、ほっと安堵したような表情になる。


『ハルくん、どうしたの?』

「それはこっちのセリフだ。」


眉間にシワを寄せながら言うハルくん。


その額にはうっすら汗をかいていて、走ってきてくれたんだと分かる。


すると、またカーテンが開かれ、今度は保健室の先生が顔を覗かせた。


「あら、目が覚めたのね。」

『はい。けど、私どうしてここに…?』

「覚えてない?あなた、体育の時間に倒れたのよ。」

『倒れた…?あ…!』


((そうだ…!昨日からご飯食べてなかったから、倒れちゃったんだ…!))


「ふふ、思い出した?」

『はい、すみません…。』

「いいのよ。大事に至らなくてよかったわ。あ、今日はちゃんとご飯食べなきゃダメよ?」

『は、はい…。』


さすが保健の先生。


倒れた原因はバレバレのようだ。


「じゃあ私、ちょっと用事があるからこれで失礼するわね。」

『はい、ありがとうございました。』


先生にペコリと頭を下げ、ハルくんに視線を戻すと、不機嫌そうな表情で私を見ていた。


「"今日は"ってどういうことだ?」

『え…あ、えーっと…』


口ごもる私を、ハルくんはじーっと見ている。


その視線に耐えられず、正直に話すことにした。


『あ、あのね、昨日からダイエットを始めまして…。』

「ダイエット?」


私の言葉にハルくんは不思議そうに首をかしげる。


「何でだ?」

『な、何でって…太ったからですけど…』

「太った?どこが?」

『み、見た目的にはあんまり分かんないかもしれないけど、体重が増えちゃったの…!』


すると、ハルくんはため息をつき、私の額をぺちっと軽く叩いた。


『いたっ!』

「今すぐやめろ。」

『へ?』

「だから、ダイエット。今すぐやめろ。」

『えぇっ!!』


額を押さえながら声をあげる私にハルくんは続ける。


「今のままでも十分細い。むしろもう少し太ってもいいぐらいだ。」

『え…いや…それは……』

「とにかく。また無理して倒れられても困るし…。」

『え…?』


思わず見つめると、ハルくんはふいっと顔をそらす。


「なまえが倒れたって聞いて…すごい焦った。」

『ハルくん……』

「だからもう、心配させるなバカなまえ。」


そう言うハルくんの顔は照れたようにほんのり赤く染まっていて、嬉しさと愛しさが込み上げてくる。


『ハルくん』

「?」


こっちに顔を向けたハルくんの頬に、"ちゅっ"と軽く口づける。


「!!」


突然のことに目を見開くハルくんに、私はにっこり微笑みかける。


『ごめんね、ハルくん。でも嬉しかった。心配してくれてありがとうっ!』

「いや、別に……」


照れているのか、視線をそらすハルくんに思わず笑みがこぼれる。


『ふふ、ハルくん照れてるの?かわいい。』

「…うるさい。」


と、次の瞬間、ハルくんにぐいっと腕を引っ張られ、目を閉じる暇もなく唇を塞がれた。


唇が離れると、"仕返し"と言わんばかりのニヤリとしたハルくんの表情に、今度は私が赤くなった。














(顔、真っ赤。)

((う、うるさい…!))



END


     

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