▽可愛いなんて







『あはは、本当〜?』

「うん、もうほんと面白くてさぁ〜!」


最近よく休み時間に、真琴くんと他愛もない話をする。


真琴くんは彼氏であるハルくんの幼なじみということもあって、すぐに仲良くなった。


『そう言えば私も最近……』


と、別の話題を振ろうとした瞬間、後ろからぎゅっと抱き寄せられた。


それに少し驚いていると、目の前の真琴くんは私の頭上に視線をやり、苦笑いを浮かべる。


「あー…ごめんって。」


そう言うと真琴くんは私に視線を戻し、"怒られちゃうからもう行くね"と教室を出て行った。


そんな真琴くんを軽く見送ってから後ろを振り向くと、案の定そこにはハルくんがいた。


その表情は不機嫌で、彼の気持ちを表している。


((そういうことね…。))


心の中で呟き、ハルくんに声をかける。


『ハルくん、どうしたの?』


しかし、ハルくんは無言のまま。


『もしかして…ヤキモチ妬いちゃった?』


すると、ハルくんはその言葉に僅かながらもぴくりと反応した。


その様子に私は、思わず頬が緩んでしまう。


『ふふ、ハルくん可愛い。』

「…………」


するとハルくんは、ふいっと顔をそらしてしまった。


そんな態度も可愛くて、私はまた笑ってしまう。


「笑うなよ…。あと、可愛いとか…言うな。」

『うん、ごめんね?』


謝りつつ、私の肩に額を乗っけているハルくんの頭を撫でる。


少しの間、されるがままになっていたハルくんだったけれど、突然バッと顔を上げた。


かと思ったら、私の手を掴んで歩き出した。


『え、ちょ、ハルくん!?』
























連れてこられたのは誰もいない屋上。


『あの、ハルくんどうし……んっ…!!』


"どうしたの?"と聞こうとした私の言葉を遮って、ハルくんは強引に唇を塞いだ。


『んんっ……あ…っ』


キスされながらぐいぐいと体を押され、背中に壁が当たり壁とハルくんに挟まれ、逃げ場がなくなってしまった。


『んっ…ふ…ぁ……』


苦しくなって口を開けば、すかさずハルくんの熱い舌が入ってくる。


あっという間に舌は絡め取られ、体がピクリと反応してしまう。


息苦しさに耐えられなくなって、ぐっと胸を押すとハルくんはようやく唇を離してくれた。


『はぁ…ハルくん…いきなりどうしたの?』

「なまえが悪い。」

『え…?』


聞き返す私にハルくんは不機嫌そうに答える。


「真琴と…他の男と喋ってたし…。」


((あ、やっぱりヤキモチ妬いてたんだ。))


「あと、俺のこと可愛いって言ったし」


((それは本当に可愛かったからなんだけど…って言ったら怒るよね…。))


「だから、今のは仕返し。」


そう言って少し照れたようにまたそっぽを向くハルくんはやっぱり可愛い。


『ごめんね?次からは気を付けるから。』


何とか緩みそうになる頬を押さえながら、もう一度謝るとハルくんは私をぎゅっと抱き締めて、耳元に唇を寄せる。


『!!』


紡がれた言葉に真っ赤になった私を見て、ハルくんはフッと笑った。


「教室戻るぞ。」


満足げにまた私の手を掴んで歩き出すハルくん。


『ずるいよ…。』


その背中に向かって、私は小さく呟いた。











"可愛いのは俺じゃなくて、お前だから。"



END



     

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