The Forbidden Love | ナノ


 ▼水泳部の誕生




勝負をすることになった凛と遙はプールのスタート台に立った。


「真琴。スタートの合図、頼む。」

「…分かった。」


3人が見守る中、凛と遙は構える。


「Ready……Go!!」


真琴の合図で凛と遙は同時に飛び込んだ。


「すごい!キック力は凛ちゃんが勝ってる!!」

「いや…ストロークのスピードは…ハルの方が上…!」


どんどんとコースを泳いでいく2人に3人は目が釘付けになる。


『やっぱりハルくんの泳ぎはすごい…!!』

「うん!ターンの時につけられてた凛ちゃんとの差が、もうあんなに縮まってる!」

「あ!最後のターンに入る!」


その瞬間、2人は水中で回転し綺麗にターンした。


「差は!?」

『ほぼ同時…!!』


そのまま2人は折り返してくる。


「並んだ!!」

「いや、ターンだと凛の脚力は有利!」

『ハルくん…っ』



緊張感が高まる中、先に壁に手をついたのは――


「っしゃあ!!」


凛だった。


「ハルちゃん!」

「ハル!」

『ハルくん!』


3人が駆け寄ると、遙はゆっくりと口を開く。


「お前の勝ちだ。よかったな、凛。」

「よかったな…?」


凛は表情を歪めると、遙の首についていたゴーグルを引っ張り睨みつけた。


『り、凛ちゃん、やめて…!』


慌てて薫が止めると凛は舌打ちし、ゴーグルから手を離した。


すると――


「こらー!!お前たち、何やってるんだー!!」


再びドアが開かれ、先生たちが入って来た。


それにより遙たちはこっぴどく怒られ、その後に家へと帰ったのだった。









『あ。渚くん、まこちゃん、おかえり。』

「ただいま」

「ただいま〜」


先日の件で、またもや先生に呼び出されていた真琴と渚は薫の姿に小さく笑った。


「天ちゃん先生、いまいち助けにならなかったね。」

「でも、結局金魚はどうなったんだろう…?」

『金魚?』

「うん。なんか天ちゃん先生がさっき言ってた名言の話なんだけど、最後まで聞けなかったからよく分からなくて。」

『へぇ〜。あとさ、』

「うん?」

『ハルくんは?』

「え?ハルなら後ろに…ってあれ!?」


いつの間にかいなくなっていた遙に真琴はきょろきょろと辺りを見回す。


「あ、ハルちゃんなら、あっちだよ。」

「『え?』」


渚の指さす方向を見ると、遙はちょうど校門をくぐるところであった。


「いつの間に…。」


肩を落とす真琴に薫も思わず苦笑する。


「薫は?今日も帰るの?」

『ううん、今日は帰らないよ。午後、大事な授業があるから。』

「そっか。」

『じゃあ私、教室戻るね。』

「うん、またね。」

「またね〜薫ちゃん!」


2人に手を振って別れると、薫は教室へと戻る。


((あ、そうだ。今日買い物して帰らなきゃ。))


そんなことを考えながら、ふと教室の窓から校門を見ると、もちろんそこにはもう遙の姿はなく、薫は小さくため息をついた。









『ただいま〜』


家に帰ると玄関にいくつかの靴が置いてあり、薫は首をかしげる。


『お客さん…?まこちゃんたちかな。』


靴を脱いで上がると、薫は居間へと向かう。


『ただいま〜。ハルくん、まこちゃんたち来て…』


言いかけた薫は部屋に女の子がいるのを見て、目を見開く。


『え…この子…誰…?』


動揺している薫に、真琴が慌てて説明する。


「あ、薫、変な誤解しないでね!この子は凛の妹のコウちゃんだよ。」

『妹…さん?』

「そう。コウちゃん、こっちはハルの双子の妹の薫。」


真琴の言葉に江は薫ににっこりと微笑みかける。


「はじめまして。松岡 コウです。おじゃましてます。」

『あ、はじめまして。七瀬 薫です。』


((そっか…凛ちゃんの妹さんか。))


挨拶を返しながら、薫はほっと安堵したのだった。









『え…水泳部?』

「そう!作ろうって話したら、ハルちゃんもいいよって。」

『そうなの?』

「別にいいとは言ってない。俺はどっちでもって言っただけだ。」


それだけ言うと立ち上がり、遙はキッチンへと向かう。


『あ、私も手伝うよ。』


遙に続くように薫も立ち上がると、真琴が薫に視線を向ける。


「お茶いれるなら、スルメイカあるよ。」

『じゃあ、せっかくだから…』

「えぇ〜チョコのがよくない?」

『チョコはちょっと甘いような…』

「じゃあ真ん中とって鯖。」

「それ全然真ん中じゃないよ!」


遙と渚の発言に苦笑しつつ、薫は真琴からスルメイカを受け取ると遙の隣に並んだ。


「そう言えば、凛はこの4年の間、一度も日本に帰って来なかったの?」

「え?毎年、お正月には帰ってましたよ?」

「そうだったの!?僕たちには何の連絡もなかったよ!?」


居間から聞こえてきた会話に、ハルくんがぴくりと反応する。


((ハルくん…あの時のこと、思い出してるのかな…。))


少し表情を歪めたハルくんの手をそっと握る。


「薫…?」


目が合い、何も言わずに小さく笑うと、その意図が分かったのかハルくんもきゅっと手を握り返してくれた。


その日の夜、薫はいつものように遙と共に縁側に座り、空を眺めていた。


『それにしても、凛ちゃんに妹がいたなんてびっくりしたよ。』

「そう言えば、薫は知らなかったのか。」

『うん。……ハルくんが、彼女でも連れてきたのかと思った。』


ぽつりと呟かれた言葉に遙は驚き、薫を見つめる。


「何言ってるんだ?薫が俺の彼女だろ。」

『うん…そう、なんだけどさ。でもほら、私たちは兄妹でしょう?だから…』


そこまで言うと、薫は悲しげにうつ向く。


『いつかハルくんが、普通の彼女とか連れてくる日が来るのかもしれないなぁって思って…。』

「!!」


遙はぐっ…と表情を歪めると、薫をキッと睨んだ。


「お前…それ、本気で言ってるのか?」

『え…?』

「俺は、ずっとお前のことを1人の女として見てきた。1人の女として想ってきた。それはこれからも変わらない…!」

『!!』

「"普通"ってなんだ…?俺たちにはこれが"普通"だろ?」

『ハルくん…』


涙を目に浮かべている薫を、遙はぎゅっと抱き締めた。


「だから、そんなこと言うな。俺にとってはお前が俺の全てだ。」

『うん…ごめんね、ハルくん。私、ちょっと不安だったの…。けど、もう大丈夫。ありがとう。』

「あぁ。」


それから、2人は月が優しく照らす中しばらく抱き合っていた。


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