あの花火大会の後、元々そんなに連絡は取り合っていなかったけれど、孝支と連絡を取るのを完全にやめた。
外にもあまり出なかったし、顔を合わせることは無かった。
けれど、夏休みが開けて学校が始まると、そういうわけにはいかなくなる。
どうしても関わりたくなかった私は、教室でも、部活でも、孝支を避けまくっていた。
そのことを、私が自分の気持ちに気づいてから、唯一の相談相手になってくれていた潔子に相談すると――
「なにそれ。菅原、最低ね。」
『あ、うん…。やっぱそう思うよね。』
ドストレートな感想に清々しさを感じつつ、私は苦笑する。
「でも、いつまでもこのままって訳にはいかないでしょ。」
『うん…そうなんだよね…。』
う〜んと唸る私に潔子は小さく微笑む。
「やっぱり1回、ちゃんと話し合ってみたら?」
『そうだよね…やっぱりちゃんと話さなきゃダメだよね…。』
潔子はこくりと頷くと、私の背中をぽんっと軽く叩く。
「なまえ、辛いだろうけど…頑張って。」
『うん。ありがとう、潔子。』
潔子の優しさが素直に嬉しくて、私はにっこりと笑った。
((やっぱり知りたい。どうしてあの時、キスしたのか。それから、本当に雰囲気に流されただけだったのか。))
ぎゅっと拳を握り、体育館の中を見回す。
けれど、孝支の姿はどこにもない。
((あれ…?どこ行ったんだろ?))
気になった私は、澤村くんに声をかけた。
『澤村くん、菅原知らない?』
「スガ?スガなら、さっき体育館出てったけど。」
『そっか。ありがとう。』
トイレかなーと思いつつ、体育館を出てキョロキョロ辺りを見回すと、人の話し声が聞こえてきた。
((誰か…いる?))
気になった私はそーっと体育館の裏へ回った。
その頃、菅原は体育館裏で五月女に別れを切り出していた。
「自分勝手でごめん。」
「やだ…やだよ菅原くんっ!やっと付き合えたのにっ…!」
「ほんとごめん。けど俺、やっぱりあいつが好きなんだ。」
「菅原くん……」
菅原の真剣な目に五月女は表情を歪めると、はぁ…とため息を吐いた。
「分かった…。」
「ほんとごめん。短い間だったけど、ありがと。」
「うん。私も、色々ありがとう。あとさ、諦める代わりといっては何だけど…最後に抱き締めてくれない?」
「……うん、分かった。」
了承すると、菅原はぎゅっと五月女を抱き締めた。
「菅原くん…私、本気で好きだったよ…」
「うん、ありがとう。」
体育館裏を覗いたなまえは抱き合う2人を見て、表情を歪める。
(やっぱり、ちゃんと五月女さんのことが好きなんじゃない…!それなのに、孝支は私にキスしたんだっ…!)
居たたまれなくなり、私はその場から逃げるように体育館へと戻った。
キスの理由を、やっぱり私は聞けなかった
To be continued…
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