あの日の約束 | ナノ
6.キスの理由を







あの花火大会の後、元々そんなに連絡は取り合っていなかったけれど、孝支と連絡を取るのを完全にやめた。


外にもあまり出なかったし、顔を合わせることは無かった。


けれど、夏休みが開けて学校が始まると、そういうわけにはいかなくなる。


どうしても関わりたくなかった私は、教室でも、部活でも、孝支を避けまくっていた。


そのことを、私が自分の気持ちに気づいてから、唯一の相談相手になってくれていた潔子に相談すると――


「なにそれ。菅原、最低ね。」

『あ、うん…。やっぱそう思うよね。』


ドストレートな感想に清々しさを感じつつ、私は苦笑する。


「でも、いつまでもこのままって訳にはいかないでしょ。」

『うん…そうなんだよね…。』


う〜んと唸る私に潔子は小さく微笑む。


「やっぱり1回、ちゃんと話し合ってみたら?」

『そうだよね…やっぱりちゃんと話さなきゃダメだよね…。』


潔子はこくりと頷くと、私の背中をぽんっと軽く叩く。


「なまえ、辛いだろうけど…頑張って。」

『うん。ありがとう、潔子。』


潔子の優しさが素直に嬉しくて、私はにっこりと笑った。


((やっぱり知りたい。どうしてあの時、キスしたのか。それから、本当に雰囲気に流されただけだったのか。))


ぎゅっと拳を握り、体育館の中を見回す。


けれど、孝支の姿はどこにもない。


((あれ…?どこ行ったんだろ?))


気になった私は、澤村くんに声をかけた。


『澤村くん、菅原知らない?』

「スガ?スガなら、さっき体育館出てったけど。」

『そっか。ありがとう。』


トイレかなーと思いつつ、体育館を出てキョロキョロ辺りを見回すと、人の話し声が聞こえてきた。


((誰か…いる?))


気になった私はそーっと体育館の裏へ回った。



























その頃、菅原は体育館裏で五月女に別れを切り出していた。


「自分勝手でごめん。」

「やだ…やだよ菅原くんっ!やっと付き合えたのにっ…!」

「ほんとごめん。けど俺、やっぱりあいつが好きなんだ。」

「菅原くん……」


菅原の真剣な目に五月女は表情を歪めると、はぁ…とため息を吐いた。


「分かった…。」

「ほんとごめん。短い間だったけど、ありがと。」

「うん。私も、色々ありがとう。あとさ、諦める代わりといっては何だけど…最後に抱き締めてくれない?」

「……うん、分かった。」


了承すると、菅原はぎゅっと五月女を抱き締めた。


「菅原くん…私、本気で好きだったよ…」

「うん、ありがとう。」



























体育館裏を覗いたなまえは抱き合う2人を見て、表情を歪める。


(やっぱり、ちゃんと五月女さんのことが好きなんじゃない…!それなのに、孝支は私にキスしたんだっ…!)


居たたまれなくなり、私はその場から逃げるように体育館へと戻った。










キスの理由を、やっぱり私は聞けなかった



To be continued…


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