2016 Valentine's Day (承太郎)
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承太郎が帰宅して玄関を潜るとパタパタと軽やかな足音が近付いてくる。お決まりの光景に、いい加減子離れをしてくれと自身の母親を思い溜息をつくが、目の前に現れたのはホリィではなく意外な人物だった。

「承太郎、おかえりなさい!」
「なんでてめーがここにいるんだ」

承太郎もよく知る彼女が、なぜか自宅で自分の帰りを迎えている。
しかし疑問に思うのも束の間で、エプロンを身に着けた彼女の姿と、巷では例のイベントで賑わっていることを思い出して大凡の察しがついた。

「えへへ、内緒」
「…そうかよ」

この状況を見れば既に答えは見えているようなものだが、それをあえて隠そうとする彼女のことを承太郎はほんの少しだけ、可愛いと思ってみたりする。

「承太郎、しばらく奥の部屋にいてね」
「別に見ねえよ」
「いいから!」

彼女は台所とは反対の方向へと腕を引いて歩く。そのとき、揺れた髪からふわりと甘い香りが舞った。今年は一体何を作っているんだか、と承太郎は彼女を引き寄せ、髪に顔を近付けようとしたところでーーホリィが彼女を呼ぶ声がした。

「クッキー焼けたわよ〜!…ってあらぁ承太郎、おかえりなさあい!」

心なしか普段より増してルンルンに見えるホリィの手には、空条貞夫のインタビュー記事が載った雑誌。ホリィもまた、バレンタインデーに向けて張り切っているようだった。

「さ、早いうちにデコレーションしちゃいましょ!私先に始めてるわねッ」
「はい、すぐ行きます」

ホリィは一言伝えると、軽やかな足取りでその場を後にする。

「バレちゃったけど今年はクッキー作ってるんだ」
「甘すぎなけりゃあ何だって構わねえけどな」
「ちゃあんとお星さまの形にしたから、楽しみにしててね」

そう言って彼女もまた台所へと戻っていく。子供に聞かせるような物言いに、なんだそれはと思わず承太郎に笑みが溢れた。その小さな背中を見送っていると、作業に取り掛かっているはずのホリィがひょいと台所から顔を覗かせた。

「承太郎〜!?しばらくこっち来ちゃ駄目よお!」
「……やれやれだぜ」

同じ忠告をする二人に呆れながらも、当日彼女はどんな贈り物を用意してくれるのだろうかと密かに心待ちにする承太郎であった。



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今年は休日だから本命だけ受け取れるといいね承太郎!


Grazie!



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