※来神時代






「折原って呼ばれた!」


机を勢いよく叩きながら身を乗り出して、臨也は新羅に口を尖らせて主張した。


「普通だよね」


それがどうしたんだ。大体、臨也を“臨也”と呼ぶ人の方が少ない。新羅は先を促すように体を支えている臨也の腕をゆっくり擦る。
そうすれば、力を抜くようにゆっくりと床に座り込んで新羅を一瞥してから俯いて小さく呟いた。



「…折原って、呼ばれたんだ」
「そう」



誰に、とは聞かない。
新羅は落とされた肩を見ながら、庇護欲を掻き立てられつつゆっくり臨也の頭を撫でる。
普段なら突っぱねるだろう手を甘んじて受け入れているのが面白い。

「…変なあだ名より良いじゃないか」
「ノミ蟲の方がいい」
「そりゃまたなんでだい?」
「特別、じゃん」
「…君、そんなにかわいそうなヤツだっけ」
「うっさい」

ゆっくり髪をすく。

「新羅、」
「はいはい、分かってるよ」



新羅は慣れたように臨也の髪に口付けた。


「ん」


ありがとう。と小さく呟く臨也は可愛い。気を良くして、手の焼ける友人にもう一度口付けようとすれば、分かっていたようにひらりと避ける。


「だーめ」


上げた顔には落ち込んでいたとは思えないいつも通りの含んだような笑みが浮かべられている。
それは、ずっと続いてきた臨也と新羅の一回だけの内緒の行為。
慰めのような気分をなだめるような。行為への明確な意味はない。
やってもらいたい時に臨也が出す雰囲気を新羅が解っているだけの話。

「はいはい」

手厳しいなぁ。新羅は苦笑しながら、頬杖をついて臨也を見詰めた。


「ふふ、良いじゃない」


臨也は至極楽しそうに笑いながら、新羅の額にリップ音を伴いながら口付けを送った。

「まぁね、さっさといっておいで」


視線は臨也に向けずに、見送るように手を振る。



「あはは、いってきまーす」
ノミ蟲とか臨也って呼んでもらう!

(呼び方に然程意味はないだろうけど)
それは口に出さないで新羅の胸の内に留める。


「ほんと臨也ってかわいそうなやつだね!」



綺麗に綺麗に臨也が笑った。



緩やかな独り占め
(未だ静雄にあの臨也の表情はあげないよ)








書いてた新臨じゃないのが先に出来た…
二人がきゃっきゃしてるのが好きです。微妙なラインの関係が好きです。ラブラブでも好きだけど、一癖二癖ある方がより好み。



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