「…何してるんだ?」


津軽は首を傾げながら、ごそごそと2人で着替えをしているサイケと臨也を眺める。
臨也の事務所兼自宅のソファの上には洋服や書類が散らばり、その中に埋もれるように二人の姿が在った。

「ふふ、面白いことー」
ね、サイケ!
「ねー」

2人で顔を見合わせて至極楽しそうに笑い合っているのを、微笑ましげに見詰めてから、はた、と気付く。


「…あ?」





*




「…シズちゃんっ!」

静雄の姿を視界に入れたサイケが、花が咲いたような笑顔を浮かべて静雄の側へ寄りするりと腕を絡める。絡めて直ぐに妖艶な笑みを浮かべながら上目に見詰める。

既知感。違和感。

少し首を傾げつつ、慣れた手付きでサイケの頭を撫でればビクリと肩を震わせるように反応してから、嬉しそうに微笑んだ。

(……?)
調子悪ィのか…?

サイケはスキンシップを好み、人の感触や体温を感じる行動には必ず溢れんばかりの笑顔を浮かべる。だが、今日はいつもの反応の前にワンクッション入る。
静雄は違和感とある種の確信を感じながらも、猫を甘やかすようにサイケの首元を擽る。


「……ッ」


小さくサイケが反応して息を詰める。ますます、静雄は確信の色を濃くしながら小さく呟く。


「可愛いな」


サイケの勢いよく上げられた頬は薄く赤く染まっており、はにかむように笑ってから、は、と我に返ったように顔を背け一呼吸してから言う。


「ありがとうっ」
うれしいなっ


いつものサイケの笑顔と何らかわりない笑顔が向けられる。

「なぁ、分かってんのか」
「なにが?」
「……どういうつもりか知らねえが、ま、いいか。サ…臨也はどした?」
「んー?つがるといっしょだよっ」

ほら、とリビングの吹き抜けた先に有る本棚の前に有る椅子に座りながら、津軽と臨也がまったり会話している様を指差す。




*




「シズちゃん、きづくかなぁ」

臨也、基、臨也の格好をしたサイケが楽しそうにリビングにいる静雄とサイケの格好をした臨也を眺める。

「気付いてんだろ」
「えー?おれ、しゃべるとバレるからってここにいるのにー?」

サイケが不満げに口を尖らせれば、津軽は苦笑する。


「"臨也"は、そんな仕草しない、な?」
「あ、そっか!いざやくんらしく、いざやくんらしく…キリッとね!」
「……まあ、がんばれ」


意気込むサイケが可愛くて、思わず頭を撫でてしまいそうになるのをぐっとこらえた。




*




「………」

サイケの格好をした臨也は内心ヒヤヒヤしながら、津軽と臨也の格好をしたサイケを一瞥した。

(俺はあんまガッツポーズしたりしないよっ)
何やってんの、あの子は…!!

あんなに打合せしたのに、と小さな憤りと仕方ないと思う心がぐるぐると胸で渦巻く。

「…イケ」


「…サイケ?」


「…っ、お、れか…!じゃなく、って、な、なに?」

反応が遅れて、失言をしてしまったような気がするが、静雄なら気付かないだろうと高を括る。

「どうかしたの、いざやくんにようじ?よんでこようか?」

いつものサイケの屈託無い笑顔を向ける。静雄が来る前に、津軽とサイケが監修の元、笑顔の特訓をしたのだ。そう簡単に見破られては納得できない、渾身の笑顔。

「…いや、いい」

はにかむように笑みながら、静雄が臨也の頭を撫でる。

「そうなの?」
「俺が用有んの…手前だしよ」
「おれ?」

(…サイケには甘いもんね)

少し気分が落ちて俯けば、静雄ががしがしと頭を撫でてから、臨也の頭を自分の胸元に引き寄せた。

「…えっ…?」
「…はぁ……分かってんだからな?」
「なんのはなし?」
「未だ言うか」
そっちがそのつもりなら。

静雄が自分の舌を舐めれば、自然に臨也の視線は引き寄せられる。次の行動を期待するように小さく息を飲む。
その様子に満足するように、静雄がゆっくりと臨也に近付いた。


「…ちょ、え、ま、おれ、サイケだよ?」
「バーカ」
気付かないわけないだろ。


そう言った静雄は至極愛しい者を見るように笑んで、それを向けられた臨也は嬉しくて自然にふわりと笑う。そうして、臨也はいつもの挑戦的な視線を静雄に向ける。


「気付いたなら早く言いなよ」
動物の本能でももっと早く気付くんじゃない?
「手前はこうでなくっちゃな、マジ殴らせろ。あ、でも」

いつもの減らず口に肩を竦めながら、静雄は思い付いたように臨也の耳元で囁く。


「殊勝な手前もなかなか良かったぜ」
可愛くて。


囁かれて臨也は、はたと最初に言われた「可愛い」がサイケではなく、臨也自身に向けられたものだと思い至り頬を紅潮させた。

「…死ね、シズちゃん」

照れ隠しの憎まれ口に、静雄は笑い、ゆっくりゆっくりと臨也の唇に自身のそれを近付けた。



(俺、愛されてんだ…?)








無限大愛
(あれっ、なんか、もうきづかれてない!?)
(いや、静雄は最初から気付いてた)
(えぇえー!?おれ、せっかく、つがるにぎゅっとしてもらうのがまんしたのにぃー)










漫画でやれよってネタですね。
サイケ⇔臨也で、入れ替わって気付けるか!?みたいな。


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