「もう少し」 いいだろ。 荒い息を交わらせ、体も心も溶け合うように貪り、共に居られる事を笑い合ったのがほんの一刻前、日が昇る頃。 睦事後特有の気だるさに身を任せて佐藤の腕枕で微睡んでいた。腕枕の上で相馬が頭を動かせば、もう日常へとスイッチを切り換えるのかと、佐藤が相馬の頭を自分に引き寄せて動きを遮る。 そうすると、ふるり、と相馬は頭を振ることで否定の意を示した。 「俺も」 もうちょっと。 腕枕なんて、程好い筋肉が付いていても骨張っている腕を枕替わりにすることは、今まで理解できなかった。 (安心するんだよね) 固いけど 腕から伝わる温もりや鼓動。唇を重ねるのも容易い距離で、呼吸さえも鮮明に聞き取れる。固さが、感触が寧ろ心地良い。 こうやってゆっくりとした時間を過ごせる日々はただの夢物語だと思っていた。 (さとうくん) 声に出さずに、間近に有る佐藤の方へ顔を向けてふわりと微笑む。 大好き。 幸せ。 有難う。 ありったけの幸せを込めて、頭を腕に擦り寄せる。 「…そう、ま」 視線をゆらゆら迷わせて、照れたように相馬の頭を自分の胸に抱き込んだ。 「わ、さ、さとうくんっ?」 突然の行動に瞳を瞬かせる。 「幸せ、だよなーって」 「…伝わった?」 先程込めた想い。そして、いつも佐藤が好きだと全身全霊で表現しているのは伝わっているだろうか。 ゆっくりと相馬が佐藤の背中に腕を回せば、佐藤がピクリと顔をしかめた。 「あ、わり」 相馬の不安そうな顔を見て、佐藤は頭を左右に振り、躊躇したまま背中辺りをさ迷い回せずにいた腕を回させる。 「ちょい傷かすっただけだから」 気にするな。 小さく微笑んで近くにある相馬の髪に唇を寄せた。 「傷?」 首を傾げて、相馬が背中に回した掌を動かせば、時々佐藤がピクリと反応した。少し面白いと感じつつ、身を捩って背中を見てみれば所々にみみず腫とそれに伴い血が滲んでいる箇所があった。 「…あ」 誰が見ても明らかに解る情事の痕。そんなに夢中になって佐藤に無意識下ですがっていたのか、と思わず頬を紅潮させる。 「…ありがとな」 「いや、俺が謝るとこだよね…ごめ……んぅっ」 痛かっただろうに、と謝ろうとした相馬の言葉を遮るように佐藤が自身の唇で塞いだ。 「ちょ、佐藤くん?」 「あやまんな、嬉しいんだから」 「…ドMだから?」 「もう1ラウンドいくか」 「すみません、無理です」 コツンと、相馬が佐藤の胸に頭を擦り付ける。 「俺が佐藤くんのものな証…」 そろりと傷を撫でながら、自然に自分の体を見下ろし白い素肌に散らばる鮮やかな刻印に満足そうに微笑む。 「…でも、足りないなぁ」 もっと、欲しい 「何が良いんだ」 「もっと、痕が残るの頂戴」 何が良いかと、2人で顔を見合わせて思案する。そうして出来た沈黙を破るように、佐藤が相馬に口付けた。さらさらとした細い髪を一房すくい唇を寄せながら、ゆっくりとした動作で相馬の瞳を覗き込む。 深いその色は、思わず瞳の中に吸い込まれてしまいそうな感覚に襲われる。 「俺、お前に、傷は残したくねえ」 こんなに綺麗な肌に勿体無い。 それに付け始めたら止まらなくなりそうだ。 髪に触れていた手を相馬の肌を確かめるように愛しむように撫でれば、先程の佐藤とは逆に相馬がピクリと反応して身を捩る。その様子に2人して恥ずかしそうに視線を交わらせてはにかむ。 「…フェアじゃない」 俺だって、佐藤くんの体に傷を残したい訳じゃない。それでも痕は欲しい。 珍しく相馬が食い下がった。 「……1つだ」 「1つ?」 佐藤が含むような笑みを浮かべて、身体を冷やさぬように掛けていたタオルケットを捲り未だ何を身に纏っていない相馬の脇腹に噛みついた。 「1つだけ、つけるから」 いつも、どこかに。 お前は俺の。 「…っ」 痛みに少し眉間に皺を寄せるも相馬は嬉しそうに指でなぞる。それに満足気に佐藤が相馬の顎を手を添えて、自分に向けて唇を合わせて呼吸を奪う。不意を突かれた相馬も直ぐに佐藤の口付けに応えるように舌を絡ませる。 2人の時間を遮るように着信音が部屋に響き渡った。 「「!」」 ビクリと身体を震わせてから、2人の時間が邪魔されたことに些か不満を露にした佐藤に相馬は微笑んで携帯に手を伸ばした。通話ボタンを慣れたように押す。 「佐藤です」 「…!?」 相馬がさらりと言った台詞に驚き、佐藤は慌てて自分の携帯を探せば、相馬の持っているのがそれで。 (…俺の!?) 「はい、はい…分かりました。あ、よく分かりましたねー佐藤くんにも伝えときますね」 分かるもんなのかなぁ 相手の声は聞こえないものの、内容としてはバイト関連の事だろう。 (そりゃ声でバレるっつの!) なんとなく、声に出して突っ込みづらく佐藤は相馬の髪を引っ張り、電話を切らせる。 「いたっいたいよ、佐藤くん」 「おまっ、なに勝手に出てんだよ!!」 てっきりお前のかと思っただろ! 「や、なんかさ、邪魔されたの悔しくなっちゃって」 「…お前も?」 「うん、俺は佐藤くんみたいにそんな嫌そうな顔出来ないからね」 勝手に出ちゃってごめんね。 申し訳なさそうに携帯電話を佐藤に差し出す。妬いて思わず電話に出たという相馬に、佐藤は嬉しいような恥ずかしいような気持ちに胸熱くなるのを感じた。 上手く言葉が見付からない。 「…マジ俺の事好きなのな」 痕の事もそうだし やっと絞り出した台詞。 「うん」 大好き。 さも当たり前の事のように屈託ない笑みを浮かべる。 「あ、店長が今日は午前中に火報の点検入るから午後出で良いよってさ」 もうちょっとゆっくりできるね。 電話での用件を伝え、満足したようにもう一度ふわりと笑い、佐藤の胸に潜り込み、佐藤が力強く抱き締めた。 ダイレクトに心地好いお互いの体温が伝わってくる。 あと、 あと1時間! 「今、15時なんだが…!?」 「す、すみません…!!」 「……」 (寝過ごす、なんて!) (気持ち良かったもんな…) 碧威要さまに相互記念で《情事後で、ベッドの中でごろごろしながらいちゃらぶするさとそま》小説ってことでピロートーク好きだぁあ!!とうきうき書かせて頂きました。 遅くなっちゃってゴメンね(>_<) いちゃ…らぶ…、っていない…!? もうちょいバカップルな話になる筈だったんだけどな…!? 要ちゃんへの愛はモリッと込めました^^*らぶ! リンク有難うございました!! これからもよろしくお願いします♪ <<戻 |