※静雄と臨也は付き合ってる設定。 「もうお前ら見てるだけであっつい」 結露した滴を付けた透明なグラスに入った麦茶を勢いよく飲み干しながら臨也が言う。勢い余った麦茶が首筋を伝うのも気にしていられない。 ソファで津軽の膝の上に乗って足をぱたぱたさせながらイヤホンを分け合って音楽を聴いているサイケと津軽は我関せず。 「波江なんか冷房直るまで出勤しないって言ってるのにー」 俺逃げ場ないんだけど! 臨也の自宅兼事務所の冷房が故障したのが今朝方。修理の業者が入るのが明日になるらしい。 「シズちゃんとこいけばいいじゃない」 事も無げにサイケがさらりと言う。 「行ける訳ないじゃん!」 「たよってもらえてうれしいっていってくれるよ」 「あのシズちゃんが言う訳ない」 頬を膨らませてながら、机の引き出しから、扇子を取り出して扇ぐ。何でもない時なら、無断で静雄の家に侵入出来るのだが、いざとなると躊躇してしまう。 「いざやくんかわいいよね」 「なんか言った!?」 「んーん」 ね、津軽。 サイケは津軽の首元に頭を擦り付ければ自然に津軽がその髪をゆっくり撫で、時々髪に口付ける。 「あっま…!!」 バカップルなんかお呼びじゃないよっ 「もーしかたないなぁ…」 「手間が掛かるな」 津軽が机上に置かれた電話を取り、記憶している番号を押して耳にあて、ダイヤル音に満足して臨也に押し付けた。 「なに」 「良いから」 不満気な表情をしながら、津軽から電話を受け取り受話器を耳に押し当てる。 『おぃ、誰だ』 悪戯電話なら切んぞ! 「!?」 シズちゃん!? 『…臨也、か?』 「……」 思わず無言になってしまえば、それを肯定と取り、静雄が分かりやすく溜息を漏らす。それに臨也はビクリ、と肩を震わせる。 『…あぁ、悪ぃ…なんか有ったのか』 「え」 優しい声音に聞き間違えかと、耳を疑う。 「…俺が臨也だって解ってる?」 『何言ってやがる?手前は折原臨也だろ』 アホか。 さも当たり前のように告げてくる言葉が何故か嬉しい反面居心地が悪い。付き合うようになって、今まで向けられることのなかった優しさに戸惑う。 「……あのさぁ」 『なんだ』 「今、家すっごい暑いんだよね。なんか冷房がいきなり壊れちゃってさぁ猛暑なのにあり得ないよね。秘書も来ないし、サイケ達はあつさ感じないから構わずいちゃいちゃ…」 『臨也、手前はマジで回りっくどいな…俺ははっきりしねえのは、嫌いだ』 「……」 『だから、避暑らせて欲しいなら、そう言え』 「ちがっ」 『違うのか?』 「……ち、がくない、けど」 『なら言うこと有るだろ』 「……」 『臨也』 「あり…がと」 『おぉ。…良くできました』 受話器越しに静雄が楽しそうに笑ったのを感じ、偉そうに言うな、とか文句を言いたくて開いた口を閉じる。思わず頬が緩む。嬉しい。 しかし、直ぐに笑ってしまった自分を認めたくなくて口をきつく結んで電話の子機をサイケに押し付けた。 「いざやくん、うれしいならうれしいっていわなきゃ」 つたわらないよ。 いつの間にか津軽の膝の上から降りたサイケが、こつんとおでこを合わせる。 毒気を抜かれたように臨也が苦笑しながら、サイケの髪を撫でた。 「行って、くる、ね」 あ、どうしよう、汗かいてるからシャワー浴びてから行こうかな。 臨也が右往左往している様子を、津軽とサイケは笑いをこみ上げるのを堪えながら眺める。 「初めて彼氏の家に泊るヤツみたいだな」 「もういろいろしてるだろうに」 「そんなこと、いってやるな」 大体サイケは色々って解かってるのか。 臨也の元から、再び津軽の元に戻ってきたサイケの顔を覗き込みながら尋ねる。 「わかってるようー」 つがるがおしえてくれたでしょう?いけないこと。たっくさん。 「……」 「つがる?」 「…なんでもない」 教育方針間違えたか、と眉間に指を当てながらも無邪気に笑ってくるサイケに微笑み返してから、抱き締めればサイケが擽ったそうに身を捩る。 「きょうはかえってこないだろうねえ」 「そうだな」 「…やさしくしなきゃだめだよ、シズちゃん?」 未だ通話中になっていた受話器に向かってサイケが微笑んだ。 『…気付いてたのか』 「あたりまえだよ。さーびす、してあげたんだから、いざやくんにやさしくしなくっちゃおこるからねっ」 いざやくんのしあわせは、おれのしあわせなんだから。 寸前、愛 (臨也のやつ、いつもあんななのか…) (いつも照れ隠しで誘っても突っぱねてたんだな) (ほんと、かわいいやつ) 臨也がなんだかかんだで、1週間ほど静雄の家に居候していたのはまた別の話。 甘く甘く。 つがサイがキューピッドポジ。焦れったいシズイザをぐいぐい押していけばいい。そしてどうしてもサイケが強い(笑) つがサイの馴れ初めもかきたい…。 <<戻 |