※温いですが、ちょっぴり危険信号です。






「…なんか良い事有ったのか」


キッチンで中華鍋を片手に佐藤がポツリとつぶやく。
「えぇっと、それは俺に対して言ってる…のかな?」
周囲を見渡し、自分しか居ないことを確認してから相馬は首を傾げて尋ねる。
「あぁ、お前だ」
こくり、と頷きながらコンロに火を付けて中華鍋を温める。
「……特に何も無い筈なんだけどなぁ」
なんだろう。
考えを巡らせながら、相馬が食洗機から出してきた皿を一つ一つ丁寧に並べていく。
(ほんと丁寧なんだけど、おっせぇ…)
嫌ではないけれど。
相馬のゆっくりとした動きを見れば、自然に手元に目が行き指の動きに見入っていれば思わず思い出さなくても良いことが浮かぶ。








『ねぇさとうくん、』


緩慢な動きで誘うように呟き、佐藤の性器を愛おしげに触れて躊躇いもなく先端に口を付ければ小さくリップ音が室内に響く。
『ふふ、まだ何もやってないのに…嬉しいなぁ』
愛撫をする前に硬度を増してきた性器に頬擦りをしてから、一度佐藤を見てにこりと微笑むと口に含む。華奢な白い手で根元を支えながら、頭を上下に揺らして刺激する。

『んっ…ふ…』
『そ…まっ…!』

粘着質な音と快楽の色を含んだ声が耳を犯す。
佐藤の感じる場所を熟知した手や舌は、裏筋を舐め上げ、見せ付けるように性感帯を犯していく。

『ふぁ、…ね、…きもひぃ…?』

聞かなくても解かるだろうに、相馬は必ず尋ねる。そして尋ねる割に答えを聞くのを怖がるように答えようと口を開いた途端に先端を吸い上げて絶頂へと追い上げる。

『ん、…くぅ……はっ、ぁ』

飲み込むには適さない粘質で苦みにあるそれをこくり、と飲み干す。一瞬眉間に皺を寄せるものは、至極幸せそうに飲み込んで胸を撫で下ろした。

『さとうく…』

微笑む相馬に堪らなくなって、さらさらの髪を撫でて己を咥えた唇へと顔を近づけ…







(…て、しっかりしろ、俺……ッッ)
必死に頭を振って、意識を戻す。


「相馬さーん!山田も今日は佐藤さん家にお邪魔したいですー!ご飯を3人で食べて相馬さんをめぐるドロドロ愛憎劇の始ま…」

「ちょ、山田さん…っ!!」

言い終わる前に、慌てた相馬が山田の口を押さえる。

「どうかしたのか」

思い出した内容からくる一抹の後ろめたさで直視できず、佐藤は相馬にちらりと視線だけ向ける。
「な、な、なんでもないよ。大丈夫」
「なんでですかぁー相馬さんー」
押さえた筈の口が解けて、山田が頬を膨らませて文句を言う。
「うんうん、とりあえず、だまって、お願いだから…」
今度納豆知識教えてあげるし、ご飯だって作ってあげるから。
少し涙目になってきている相馬にまた頭が他の所に行きそうになるのをしっかり留める。
「山田、なんだか知らんが許してやれ」
「えー」
「え、なに、俺が悪いことしたことになってるの!?酷い佐藤君!」
「仕方ないですねー。山田は相馬さんが今日佐藤さん家に行く約束してるんだってうきうきしてること黙っててあげます!」
「言ってるし…!!!」
キリッと言い残し鼻歌を歌いながら、ホールに向かう山田を横目に相馬は項垂れ、おそるおそる佐藤に目を向けた。
「……さ、さとうくん、あの、ね」
これには深い深い訳が。
「…そういえば、今日、来るっつってたな」
「…忘れてたの…?」
「いや、…んなことねえけど…わりい」
「え、駄目になった?」
そうだよね、柄にもなく浮かれちゃって、なんか、ごめん。
そんな風に瞳を潤ませて俯いた相馬に先程思い出した相馬が重なる。
「…相馬は悪くねえ」
不謹慎なのは自分だ。
「…は?」
「今日はちゃっちゃと終わらせて帰んぞ!」
「え?」
キョトンとする顔に佐藤は笑い耳元で囁くと、相馬は顔を真っ赤にさせてぱくぱくと口を動かした。







我慢できない
(全部、全部、俺に)
(佐藤君のバカ…!)









だって若いんだから仕方ない。
別人なのはいつものこと。


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