「声聞きてぇー…」



譫言のように千景が呟き、周囲の仲間はまたかと肩を竦めた。
誰の、という疑問は野暮なもので、分からないのはモグリかという位定期的に呟かれる、それ。
誰も突っ込みを入れないまま、ごく自然に千景に買ってきたばかりのシェイクを手渡せば、ぼんやりとストローに口を付けた。
イチゴ味、甘い。
こうなれば、いくら可愛い子が居ても意味を為さない。


チラリ、と鳴らない携帯電話を一瞥してリダイヤルの画面にしてみれば、羅列される名前に思わず口角が上がる。


(か、ど、た、き、ょ、う、へ、い)


一文字一文字発音するように、ゆっくりと唇にのせれば、口の中に残るシェイクの甘さが胸に浸透する。作られた甘さが心地良さに、頭に糖分が回り少し思考がクリアになった。
至極分かりやすい結論に到達する。



(四の五の言わず行動有るのみ!)



勢いよくシェイクを吸い込んで、コップを置いて空を仰いで画面も見ずにリダイヤルの一番上を選択して、耳元に当てる。




「て、えぇえ!?」



耳に届くのは話中を伝える音に、思わず耳元から携帯電話を離して千景は大声出した。肩を勢いよく落としてしまうのは見逃して欲しい。近くで仲間が心配そうな雰囲気を醸し出すのを肌で感じて、心配させないように小さく頷いて掌をひらりと振った。


(なんだよ、門田のやつ…)


理不尽なモヤモヤした感情が生まれ、皆に見えないように頬を膨らませる。


(あんたも会いたいだろ、俺に)


そう思い至った時に丁度、視界の端にバイクを見付けて満足そうに千景は笑った。



門田の携帯のリダイヤル履歴には丁度同じ時刻に千景の名前が有ったのを見付けるのはまた別の話。





無自覚同士、噛み合わない。
(端から見たら噛み合ってんのにな)
(良く飽きずにタイミング良く毎度やるよなー)





「で、結局(また)来たわけか」
「おうよ!門田、嬉しいだろ?」
「……」
「え、嬉しくねぇの!?」

目を見開いて驚く千景を門田はゆっくりと髪を梳くように撫でつつ、視線を千景と交わらせてゆっくり言う。
千景の無邪気な笑顔が見られるのを確信しながら一言ずつ大事そうに、楽しそうに。





「お前なら、解る、だろ?」











企画<Love×Honey!>様に提出させて頂きました!
飛び入りで参加させて頂き、大変楽しかったです…!

好きなのに気付けば初めて書いた門六で、ありがちネタですが一度やってみたかったので…今回はこのような素敵な企画と機会を下さって有難うございました!
らぶ!






















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