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六時間終了のチャイムが鳴ると、みんな慌しく教室から出て行く。
わたしは沙和と一緒にミツルくんが来るのを待っていた。
鞄の中から小さなポーチと鏡を取り出すと、おもむろにリップを塗りたくるわたし。
そんなわたしを見て、ほんの少し困ったように眉毛を下げる沙和が言わんとしていることは分かっている。
こんなことしたって、和也くんの心に踏み込めるわけもなく、きっとわたしはこのまま和也くんを好きでいてもその恋に終わりはない。
変わることのない平行線がいつまでも続くだけだと。
「ユカリ、本当に行くの?」
だから、そう出た沙和の言葉はごくごく自然なものだと思う。
そう言われることも予想していたし、覚悟していた。
「うん、行く。沙和…心配してくれてありがとう。でもわたし、やっぱりoneにいる時の和也くんを見てみたい」
本当だった。
正直学校にいる和也くんは、教室で寝ているか、ゆきみに微笑んでいるかのどちらか。
わたしがあの日見た和也くんは、強くて何の迷いもない目をしていた。
煌びやかなテイルランプの中で、真っ直ぐに前を向いていた。
暴走自体にどんな魅力があるのかは分からないけれど、和也くんを夢中にさせているもの全てを、わたしは知りたい。