■ プロローグ
初めてキミを見たのは、夜の街道だった。
わたし達の界隈を仕切っていると噂の暴走族チーム【one】
毎週金曜日には小さな暴走を繰り返す中で、キミの乗ったシルバーのバイクだけが、どうしてか輝いて見えたわたし。
真っ黒い車を囲むように連なるその中で、真っ白い特攻服の背に、“和也”って文字と、真っ赤な薔薇の花を咲かせて、堂々と街道を走り抜けるその姿に、たまたま友達と遊んでいて遅くなってしまったわたしは、その姿に魅了されてしまった。
中学三年の夏、わたしは近場の高校への進学を希望していたけれど、どうしてもカレをもっと知りたくて、この辺じゃ有名な「不良高」にあたる「N高」へと、進路変更をした。
幸い、暴走族【one】を知る人は、うちの中学にも沢山いて、カレがどんな人なのかを知る術は腐るほどあった。
吉岡和也。
【one】の特攻で、セカンドを誇る拓真の最愛の恋人、ゆきみを一途に想っている。
そんな情報は簡単に出てきた。
その想いは半端なく…拓真がいるにも関わらず、いつ何時だって、ゆきみのことを一番に、ゆきみの言葉を絶対に生きている…。
決して叶うことはないと分かっていながら、諦めることをしない…
その気持ちは、痛いほどよく分かる。
和也くんと同じ気持ちをわたしも抱えているから。
拓真を想うゆきみを愛する和也くん。
そんなゆきみを想う和也くんを好きな、わたし。
その想いはどちらも叶うことがなく、それでも諦められないでいる。
どうすることもできないんだ。
まるで鳥かごの中の鳥。
自分で羽ばたくことさえも、許されない…―――