策士の中身が知りたい1

駅の反対側にあるカフェに行こうとしてすぐに哲也さんが駆け寄ってきた。

まさかこんな早く抜け出すとは?思わなかったものの、こんなに早く二人きりになれてめちゃくちゃ嬉しいわけで。

私一人が舞い上がってる訳じゃ、ないよね?


「なんかいてもたってもいられなくて、すぐ抜けちゃった!さて、シンデレラ、今夜は何時までいける?」


まさかの質問に内心顔が緩む。

急遽誘われた合コンで恋なんてもう何年もしていない私にとって今日という日は至って普通の何も変わらない平凡な日。

だから正直なところ今朝どんな下着を纏ったのなんて覚えてもいない。

だけど確実に勝負下着ではない。

ゆえに、朝までコースはNG…って私ってば勝手に朝までコースを期待しているなんて、哲也さんだってさすがにそこまで考えてるわけないよね?

バカバカ、無駄に盛り上がるのは悪い癖だぞ、リコ!

ニッコリ微笑んで小さく告げた。


「終電までなら…」

「終電ね。分かったんじゃあとちょっとだけだけど、俺と二人の時間、楽しんで?」


そう言いながら哲也さんはスッと私に手を差し出した。

スマートに慣れた感じで。

別に今更恥じることでもないよね?って私はその手にギュッと捕まる。

その瞬間キュッて哲也さんが指を絡めて…うわ、恋人繋ぎとか久しくしていない、やばくない?しかもこんなイケメンと…。

やだ私、釣り合ってないとか思われてないかな?大丈夫かな?

急に不安になったんだ。

繋がれている手が嬉しいのに自分という人間に全くもって自信のない私は、行き交う人がみんな私を見て「うわ、似合わない」なんて思っているんじゃないか?と思わずにはいられない。

だけどそんな気持ちを哲也さんに知られるなんて絶対に嫌だった。

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