広臣の香りを強烈に感じながらギュっと背中に腕を回した。

でも次の瞬間…―――

ブー…ブー…――スーツの上着のポケットで鳴り響くスマホのバイブ音。

パチっと目を開くと、まだ触れあったままの唇をゆっくりと離した。


「電話だね…」


私が言うと視線を私から移すことなく「メール、メール」そう言うんだ。

今の私達にとって、どんな内容の電話よりもこの甘い時間の方が大切だよ!とでも言われた気分になる。

目を閉じて広臣の唇を堪能していた私に、「ちょっと待って、ユヅキすげぇエロイ!」まさかのそんな声が飛んできた。


「…へ?」

「いやキス顔…」


そう言って照れたように目を逸らす広臣の耳は赤い。

それがすごく新鮮に思えてクスっと笑った。


「キス顔見たの?」

「見たよ…見てぇもん」

「じゃあ私も見る」


そう言って広臣の頬に手を添えると、そのまま唇を重ねた。

思いっきり目を開けたまま私を、同じように目を開けたままの広臣。

当たり前に目が合うわけで…。

軽く目を閉じそうな顔をされる度にドクっと胸の奥が疼いた…―――これはヤバイ!


「待ってたんま。広臣ってなんでそんな色気があるの?」

「へ?色気?え、俺ある?」


片眉だけ下げて私を見つめる広臣。

コクって首を傾げながらも私の服に手をかけて脱がせていく。


「あるよ、すっごいある。だって広臣のキス顔のがエロイ!」

「マジ?じゃあもっと見せる。ユヅキのキス顔のがエロイけどね」


ニって口角を上げて笑うと、腕で私の腰を引き寄せてそのまま熱く唇を重ねた――


最初はお互い目を閉じてしていたキスも、途中でほんのり薄目を開けたらちょうど広臣も薄目を開けたところだったみたいで、目が合って噴き出した。


「マジでエロイな俺の彼女は」

「私の彼氏もね」

「一緒に風呂入る?」

「…ダメ、恥ずかしい」

「いーじゃん。俺だけなんだし」

「だってすごい明るいじゃない、お風呂場って。全部見られちゃう…」

「いやもう全部見たって!」


そうだけど、そうだけどさ。

もじもじしている私を見てポンって頭を撫でると「うーそ。先に入っていいよ」優しく笑ってそんな言葉をくれた。


「広臣先でいいよ」

「いいの?んじゃすぐ入ってくるな」


無理じいしない優しさも、大好きだよ。