恋しい夜(7 / 30)

「なんでこうなるの…」


めっちゃ狭い私のアパートに4人。

直人さんが色々言ってくれたのに断固拒否のタカノリ。

あのままだと直人さんに迷惑がかかるからって、とりあえず飲み屋を出た。

臣ちゃんはやっぱりぐったりしているから早くベッドで寝かせてあげたくて。

朝海ちゃんは本当に帰る!って言って、健ちゃんと手を繋いで帰って行っちゃうし…

さすがにシャワー浴びる勇気もなく、明日みんなが帰ったら浴びてバイト行こうって決めた。

相変わらず隆二はずーっと煙草を吸っていて、タカノリはまだ飲み足りないのか、コンビニで缶チューハイを買ってそれをゴクゴク飲んでいた。


「ゆきみ寝よ」

「え?…」


同じベッドはどうなの?

躊躇している私に「さすがに今は怠くて何もできねぇよ」…そっか、よかった。

って、よくはないけど。


「隆二、ベッドなくてごめんね?大丈夫?」

「平気平気。それよりさ、直人ゆきみにすげぇかまうよね。でもあんま鵜呑みにしない方がいいよ?」


え?

隆二の言葉に思考が止まる。


「そーそー俺らにゆきみを取られないように必死すぎるっつーの」


なにそれ?

臣ちゃんなに言ってんの?


「隆二俺にも一口ちょーだい」


臣ちゃんの言葉に咥えていた煙草をそのまま差し出した隆二。

一口吸ってすぐに隆二に返す臣ちゃん。

その煙がこっちにきて顔をしかめると、「ごめんね」小さく隆二が謝った。


「ゆきみ奥いく?」


臣ちゃんの言葉に頷いて私は壁に向かって横向きになると、後ろから臣ちゃんがふわりと抱きついた。


「え、臣ちゃん?」

「いいから。抱きしめるだけでなにもしねぇよ。寒みぃーんだよ、全部吐いたから…あっためてよ」


そんなこと言われたら拒否できない。

臣ちゃんは嫌いじゃないし、どちらかというと好き。

もちろん直人さんへの気持ちとは種類が違うけど。

臣ちゃんが私のことをどこまで本気で想っているのかなんて分からないけど…


「臣ちゃんもう気持ち悪くない?」

「んー平気。俺負けないから、直人には。ゆきみは絶対ぇ渡さない!」

「臣ちゃん私は直人さんが好きだよ?」

「俺もゆきみが好きだよ」

「………」


毎日のように言われるから、それが本気か遊びかも分からなくて、だから臣ちゃんの気持ちを素直に受け止められない自分もいた。

私の心は既に直人さんのものだし。


「まだ直人の女じゃないんだから、諦めねぇよ」


臣ちゃんの声に目を閉じると浮かぶのは直人さんで。

さっきまで傍にいた直人さんがたまらなく恋しい。

臣ちゃんに抱きしめられているけど、心の中は直人さんでいっぱいで、明日直人さんにバイトで逢えると思うと胸が焦げる思いだった。


「おやすみなさい」


疲れていたのか、臣ちゃんの温もりがちょうどよくて気づいたら夢の中だった。


―――朝起きたらタカノリも隆二もいなくて、臣ちゃんと2人きりだった。


 / 

back